「乗り鉄」とも呼ばれる鉄道旅行が、今とてもアツいです。
鉄道をひたすら乗り歩く「乗り鉄」という趣味はかつて、一部の鉄道ファンが楽しむ程度でした。しかし、今では乗り鉄が一般の旅行者にも広まってきています。
しかし、鉄道旅行の計画を立てる上で、駅や列車の情報を調べるには、独特なスキルが必要です。また、鉄道運賃や料金の計算を行う上での基礎であるきっぷのルールも、複雑かつ難解です。そのため、鉄道旅行をせっかく思い立ったものの、その敷居が高いという印象を持たれているのではないでしょうか。
今ではインターネットでそれらの情報を簡単に検索できるものの、至って断片的なものです。鉄道旅行を計画するためのスキルを一から習得できれば、鉄道旅行の幅がグンと広がります。
その際のポイントは、情報収集をインターネットだけに頼るのではなく、書籍を活用することです。
鉄道旅行の計画作成に欠かせないのは、大型の時刻表です。時刻表を読みこなすには、地理に関する知識がある程度必要なので、各種地図帳の併用が効果的です!
この記事では、鉄道旅行をより充実させたいと思っている方に向けて、鉄道旅行や旅行地理の基礎を学べる必携の書籍を、いくつかご紹介します。情報を得るための基礎的なスキルを習得できれば、奥が深い鉄道旅行を楽しめるに違いありません。
鉄道旅行には計画づくりが欠かせない
気がおもむくままに列車を乗り継ぎ、見知らぬ街に向かうのも楽しいものです。しかし、出発前にどの列車に乗車するかを計画しておけば、より少ない待ち時間でより遠くまで出かけられます。
そのためには、あらかじめ列車の情報を収集し、旅行の計画を立てることが欠かせません。
ただし、鉄道旅行の計画を立てるにあたっての予備知識が、とても幅広いのです。旅行の目的地に関する情報だけではなく、以下のような知識もあわせて押さえたいです。
- 主な線区や駅の名称(旅行地理)
- 鉄道運賃・料金のしくみ(きっぷのルール)
- 鉄道車両・設備
鉄道の知識といっても、とても幅広いことがお分かりではないでしょうか。
実際に、全国にあるJRの駅は4千を超えていて、プロであってもすべての駅を覚えられるわけではありません。列車が走る区間や駅を押さえなければならないことが、最初のハードルになるのです。
これらの知識を、できるだけ楽しく習得したいですね。
鉄道旅行に関する情報収集のための手段
そこで、鉄道旅行に関する知識を習得するための手段にはどのようなものがあるか、ここで触れていきたいと思います。
インターネットから得られる情報は断片的
冒頭で申し上げた通り、現在ではインターネットで鉄道旅行の計画を立てたり、情報を収集することが簡単にできます。何より、無料で鮮度の高い情報が得られます。
- 乗換案内アプリ
- 鉄道会社の公式ウェブサイト
乗換案内アプリを利用すれば、どの駅でどの列車に乗り継ぐかを簡単に調べられます。それに加え、所要時間や運賃・料金も一発で検索できます。しかし、乗り鉄を楽しむための列車を、必ずしも検索できるとは限りません。
また、鉄道会社のウェブサイトを閲覧すれば、最新かつ正確な情報が即座に得られます。しかし、この情報は、難解であることが多いのです。また、鉄道会社側からの発信であるため、鉄道会社にとって都合のよい情報が一方通行で流れてくることにも留意したいです。
何より、自分の思うように鉄道旅行の計画を立てるには、インターネットから得られる断片的な情報が少し物足りないと言えるのではないでしょうか。
書籍から得られる情報は貴重
鉄道旅行を単なる移動手段としてとらえるのではなく、それ自体を趣味にするには、情報を主体的につかんでいきたいです。
点と点を結ぶ飛行機や高速バスでの旅行とは違い、鉄道旅行は複雑に絡み合った網の中を進むようなものです。そのため、旅行のパターンは無限大ですが、それに比例して奥が深いのです。
それゆえ、インターネットで得られる断片的な情報では物足りなく、書籍から体系的に学ぶ必要があります。
それでは、鉄道旅行の計画作成に役立つ書籍をご紹介します!
鉄道旅行の計画力を高めるための書籍
鉄道旅行の計画にあたって欠かせない書籍には、具体的には以下のようなものがあります。
- 時刻表(JR時刻表・JTB時刻表)
- 列車編成席番表
- 日本の鉄道車両完全図鑑
- 全国鉄道地図帳
- 全日本鉄道旅行地図帳
- 旅地図(日本)
これらの書籍が有料であるからこそ、価値ある情報にあふれていると言えましょう。これから、各書籍に関して、詳しくご説明します。
時刻表(JR時刻表・JTB時刻表)
時刻表に関しては、小型の冊子から大判の冊子まで、多くの種類が刊行されています。それらの中にあって、旅行のプロも使用するのが、大判時刻表です。「JR時刻表」と「JTB時刻表」が、大判時刻表の双璧を成しています。
これらの時刻表にはそれぞれ強みと弱みがあるため、好みが分かれるところです。
JR時刻表
JRグループの交通新聞社から毎月刊行されているのが、「JR時刻表」です。紙媒体の時刻表に加え、デジタル版も提供されています。
発売時期:毎月下旬
紙媒体の価格:1,375円(税込)
JR線を走る全列車の全駅の発着時刻が、一冊に凝縮されています。また、全特急列車の編成表が掲載されており、普通車指定席・自由席およびグリーン車が何号車であるか、おおよその位置関係が一目で分かります。
JR時刻表の特徴は、次の通りです。
● JR公式の時刻表として駅に設置されている
JR6社が共同で編集しており、駅のみどりの窓口に設置されている公式性が、JR時刻表の強みです。駅員も業務で使用しているので、より実務向きと言えるでしょう。
● 2色刷りである
新幹線や在来線特急列車が、カラーで表示されています。新幹線のページでは、速達タイプの列車が水色で、緩行タイプの列車が黒字で表示されています。また、各線区別のページでは、特急列車が赤色、それ以外の列車が黒字です。
● 特別企画乗車券(トクトクきっぷ)の情報が一手に得られる
鉄道旅行を手頃に楽しむには、おトクなきっぷが欠かせません。インターネット上には、それらのきっぷ(特別企画乗車券)が一覧で表示された公式なリソースがありません。しかし、JR時刻表には、JR各社から発売されているきっぷが掲載されています。書籍ならではのメリットと言えるでしょう。
● JR線の情報に特化
書籍の名称があくまでも「JR時刻表」のため、掲載されている情報がJR線に特化されています。JR線以外の私鉄各社の情報や、鉄道以外の交通手段の情報が薄い点に留意したいです。
JTB時刻表
JTBグループのJTBパブリッシングから毎月出版されているのが、「JTB時刻表」です。JRが発足する以前の国鉄時代には、国鉄からの監修が入った公式の時刻表でした。
発売時期:毎月下旬
価格:1,375円(税込)
時刻表から得られる情報は、JR線に関しては上述した「JR時刻表」とほぼ同じです。刊行時期や価格も、JR時刻表と全く同じです。しかし、鉄道旅行に限定せず、他の交通手段に関する情報が充実しています。総じて、ユーザー寄りの内容になっています。
● 私鉄各社の情報が豊富
JR時刻表とは対極的に、私鉄各社の列車に関する情報が豊富です。JRの情報の他、私鉄の企画乗車券(おトクなきっぷ)や有料特急列車の詳細な時刻が掲載されています。
JR以外の多くの交通機関の情報を扱う点で、旅行会社JTBの強みが活かされていると言えるでしょう。
● 単色刷りである
新幹線、在来線特急列車とも、黒色で表示されています(太字で印字されることで普通列車との区別が可能)。カラー印刷が苦手という場合には、JTB時刻表を選ぶメリットがあると言えます。
● JR各社のシーズン別カレンダーが裏表紙に掲載されている
新幹線や在来線特急列車の料金計算に欠かせない、シーズン別のカレンダー半年分が、裏表紙にカラーで掲載されています。ピークシーズンを避けて旅行しようという場合、このカレンダーが助けになるでしょう。
● 航空に関する情報が充実
日本国内線や日本発着の国際線に関する情報が、JTB時刻表では充実しています。一つの旅行で鉄道と航空の両方を利用する場合、計画を立てやすいと言えるでしょう。
鉄道旅行のスキル向上には時刻表読解が必須
インターネットで情報を検索する時代になりましたが、ご紹介したJR時刻表やJTB時刻表には、書籍でしか得られない貴重な情報が詰まっています。時刻表を利用するメリットは、次の通りです。
- アプリでは表示できない乗り継ぎパターンを調べられる
- 途中駅の発車時分や通過する駅などの詳細な情報が得られる
- 駅の構造を理解し、適切な乗り継ぎ時間を見積ることができる
- 基本的な運賃・料金のしくみを理解できる
このようなことから、時刻表を活用することで、鉄道旅行のスキル向上に直結することに間違いありません。
別の観点から、各時刻表の特色を以下の記事にまとめてあります。ぜひご一読ください。
列車編成席番表
乗り鉄の楽しみは、車窓から望める風景です。進行方向のどちらから、どの風景を眺められるかをあらかじめ調べておくと、指定券を買う時に役立ちます。
JR各社の新幹線および在来線特急列車、私鉄各社の有料特急列車における各車両の席番が、「列車編成席番表」という書籍にまとめられています。
出版元:交通新聞社
価格:3,300円(税込)
ダイヤ改正に対応した春版、そして夏・秋版が、毎年発売されます。
各ページには、列車の編成と、各車両の席番が見取り図として掲載されています。あわせて、列車の進行方向や車窓から見える風景が分かります。
また、窓が小窓か広窓かも明記されており、風景をより広く眺められる快適な座席がどこか分かるため、非常に有用です。
前述した時刻表にも一部の列車の編成や席番が掲載されていますが、十分とは言えません。列車編成席番表が手元に1冊あると、どの席番を選べばよいのか分かるので、とても心強いです。
日本の鉄道車両完全図鑑
どの列車に乗車して旅行するかを考える際、前提になるのはどのような車両であるかです。例えば、新しい車両にいち早く乗車したい、観光列車に乗車したいといったことです。
日本全国を走る鉄道車両には、実に多くの車両型式があります。それらを1冊にまとめたのが、「日本の鉄道車両完全図鑑」です。
出版元:Gakken
出版年月:2024年4月
価格:2,970円(税込)
多くのジャンルの書籍を出版する、Gakken(学研)から発売されています。メディカル分野の出版やこども用の図鑑などの出版が強みであることから、日本の鉄道車両完全図鑑も質が高いです。
この書籍には、日本の全鉄道会社の現役車両全型式が掲載されていて、新幹線や在来線特急列車の車両に関する情報を効率的に得られます。
特急列車に関しては、全区間の走行距離と所要時間、運行本数が記載されています。時刻表と併用すると、実際に乗車しなくてもどのような列車かがよく分かります。
ただし、限られたページに多くの情報が詰め込まれているため、各車両の情報は限られています。どちらかと言えば、鉄道車両を広く浅く知りたい場合に適した本です。
全ページカラー印刷で、読んでいて心躍ります。そのようなことから人気が高い本で、重版されています。発売されたら、いち早く入手することをおススメします。
列車の知識に加え、旅行地理の知識を習得すると旅の幅が広がります。これから、それに役立つ書籍をご紹介します!
全国鉄道地図帳
乗り鉄をする上で、列車の走行位置を知るのは、とても大事なことです。地図帳には多くの種類がありますが、鉄道に特化した地図帳「全国鉄道地図帳」が、鉄道旅行の計画には最適です。
出版元:昭文社
出版年月:2023年12月
価格:3,960円(税込)
道路地図や都市地図をはじめ、各種地図を出版している昭文社から、この地図帳が発売されています。価格は決して安くないですが、ページ数が多く、情報の密度が濃いため、それに見合う情報量があります。
この地図帳には、現存している鉄道路線や廃線の情報が詳しく掲載されています。地図の縮尺は、本州では25万分の1が中心ですが、地図の精度はかなり高いです。
各ページに掲載された情報から、路線が単線か複線か、高架線か地下線かを読み取れます。また、鉄道施設や写真撮影スポットに関する情報も豊富です。
時刻表と併用すると、どのような列車がどのような場所を走るのかがよく分かります。誌上旅行を楽しめるといっても過言ではありません。
インターネットの地図では得られない、質量の高い情報が詰まっています。ぜひとも手元に置きたい一冊です。
全日本鉄道旅行地図帳2024
観光列車や特急列車に乗車する際、どのような場所を走るのか、どのような風景を車窓から眺められるのかを旅行の計画時点で把握できると、とても心強いです。
日本全国の鉄道の路線図を一冊にまとめたムック本が、「全日本鉄道旅行地図帳」です。最新版は、2024年版です。
出版元:小学館クリエイティブ
出版年月:2024年3月
価格:1,760円(税込)
100ページ強と、非常にコンパクトなボリュームながら、多くの情報が一冊に詰まっています。全ページがカラー刷りであることはもちろん、誌面がとても美しく、分かりやすくまとめられています。
日本全国に網を張る各鉄道会社の路線を把握できることは言うまでもありませんが、特に観光列車に関する情報量が多いです。また、鉄道スポットや鉄道遺産も地図上に記載されていて、訪問のための計画が立てやすくなっています。
ただし、各ページの縮尺が統一されておらず、ページによって縦向きだったり横向きだったりしていて、本が若干扱いにくいのがこの本の難点です。
情報量が多い割には値段がリーズナブルなので、鉄道旅行の初心者にとって手を出しやすい一冊だと思います。
旅地図(日本)
「旅地図」は、鉄道旅行で訪れることができる観光スポットを調べられる地図帳です。旅地図は、海外版と日本版の2冊で成り立っていますが、ここでは日本版についてご説明します。
出版元:昭文社
出版年月:2022年11月
価格:2,750円(税込)
この地図帳も、地図や旅行ガイドが強みの昭文社から出版されています。全ページカラーで、とてもカラフルな一冊です。
観光スポットの写真やイラストが豊富です。国立公園・国定公園の名称や世界遺産についても、各ページに記載されています。
この地図帳は、鉄道に特化したものではありません。ただし、観光スポットとしての観光列車が紹介されています。
鉄道旅行を極めるためには、鉄道に関する知識だけではなく、観光地理も是非押さえたいです。そのために役立つ一冊です。
まとめ
「乗り鉄」とも呼ばれる鉄道旅行は、とても奥が深いです。行き当たりばったりの汽車旅も楽しいですが、事前に知識を得て鉄道旅行の計画を作成しておくと、実りの多い旅になるでしょう。
インターネットで鉄道会社の公式情報が得られますが、情報が断片的であり、一方通行でもあります。そこで、鉄道旅行に関する書籍を読んで、鉄道旅行に関するスキルを習得することで、主体的に計画を立てられます。
鉄道旅行を志す上で避けて通れないのが、時刻表の読解力です。乗換案内アプリでも列車の乗り継ぎを調べられますが、鉄道旅行を楽しむための情報としてはいまいち物足りません。
旅行のプロが用いるのが、B5判の「JR時刻表」および「JTB時刻表」の2種類です。それぞれ同じ情報が収録されていますが、情報の見せ方で差があります。自分の好みに合った一冊を愛読したいです。
時刻表の他に、鉄道旅行に関連した書籍を併用すると、鉄道旅行に関する知識がより奥深くなります。以下の書籍が、鉄道旅行の下調べをする上でとても有用です。
- 列車編成席番表
- 日本の鉄道車両完全図鑑
- 全国鉄道地図帳
- 全日本鉄道旅行地図帳
- 旅地図(日本)
「列車編成席番表」を活用すれば、より適切な席番を選択できて、思い出深い鉄道旅行になることに違いありません。
「日本の鉄道車両完全図鑑」を読んでおけば、乗車する列車がどのような車両かを事前に知ることができます。
「全国鉄道地図帳」を参照することで列車が走る位置や地形を押さえられ、列車に乗車する前から実際に旅行したかのような臨場感が得られます。
「全日本鉄道旅行地図帳」が手元にあれば、観光列車に関する情報を事細かに調べられます。
「旅地図(日本)」を見れば、旅行の目的地に関する知識を楽しく学べます。
これらの本を通じてスキルを向上させることで、より充実した鉄道旅行を楽しめるでしょう。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
当記事の改訂履歴
2024年10月08日:初稿 修正
2024年9月24日:当サイト初稿
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