東武鉄道鬼怒川線をゆっくり走る観光列車「SL大樹」号。2017年に列車がデビューしてから数年経ち、蒸気機関車や客車の数が増えています。
この列車が走る下今市駅から鬼怒川温泉駅まで、片道約40分間の小さな旅です。蒸気機関車に連結された客車には、編成によって簡易リクライニングシートやボックスシートといったタイプの違う座席が設備されています。何度乗っても楽しく、飽きがこないよう工夫されています。
SL大樹号は全車指定席で、乗車するには乗車券・交通系ICカードの他に座席指定券が必要です。乗車するまでに座席指定券を購入するわけですが、一般の特急列車とは発売の仕方が少しだけ違うことに留意したいです。
かつて発売されていた硬券や補充券といった手売りきっぷが続々と終売になり、現在は端末券に統一されました。きっぷからレトロさを感じられなくなったのが残念です。
この記事では、「SL大樹」号および「DL大樹」号に乗車に必要なきっぷの準備方法を詳しく説明します(当記事では、両者を「SL大樹」と表記します)。
「SL大樹」号の概要・アクセス
「SL大樹」号に乗車するために必要なきっぷや料金についてお話しする前に、この列車について簡単におさらいします。
「SL大樹」号は、栃木県随一の観光エリア、日光と鬼怒川の中間にある下今市駅(栃木県日光市)から鬼怒川温泉駅までを結ぶ客車列車です。多くの観光列車が土曜・休日に運行されるのに対し、この列車は平日を含め通年運行です。平日に限っては、「SL大樹ふたら」号として、東武日光駅(栃木県日光市)を発着します。
蒸気機関車(SL)もしくはディーゼル機関車(DL)が、3両編成の客車をけん引します。現在では客車列車はほとんど現存しないため、文化財級の貴重な存在です。
SLが客車をけん引する場合は「SL大樹」、DLがけん引する場合は「DL大樹」が列車名となります。
この列車は、鬼怒川温泉駅への移動手段であることは言うまでもありません。それに加え、日光・鬼怒川地区における重要な観光スポットとも言えます。
列車が発着する下今市駅には、東武日光線で向かいます。浅草駅から「スペーシアX」などの特急列車に乗車する場合の所要時間は、浅草駅から約1時間40分です。普通列車で向かう場合、南栗橋駅から東武日光駅ゆきに乗車します(南栗橋駅からの所要時間は約1時間40分)。
下今市駅までマイカーで向かうことも考えられますが、駅には専用の駐車場がありません。そのため、自分で駐車スペースを探して確保する必要があります。できる限り列車を利用して、下今市駅に入りたいです。
SL大樹号の運行ダイヤおよび様々な蒸気機関車や客車に関する詳細については、別の記事(↓)にて詳しく説明します。
「SL大樹」号の設備~座席の種類~
2017年に初めて東武鬼怒川線を走り始めたSL大樹号。運行当初は、C11-207蒸気機関車1両と14系客車3両のみでしたが、その後蒸気機関車・客車とも増備されました。現在では、C11蒸気機関車3両と12・14系客車9両が在籍し、同線を走ります。
現在では3編成走行できる状態で、鬼怒川線内では複数の編成が走っています。現在9両が在籍する客車の座席には、いくつかタイプがあります。
1・3号車:簡易リクライニングシート(14系客車)
運行開始当初から連結されている客車です。合計で6両あり、主力の設備です。いずれも簡易リクライニングシートで、1号車と3号車はこのタイプです。
簡易リクライニングシートとは、座っている間だけ座席がリクライニングし、席を立つとリクライニングが解除されてしまう簡易な装置を指します。
昭和中期の客車の雰囲気を味わえます。
2号車:ドリームカー(14系客車)
元々JR北海道管内で使用されていた客車で、1両のみあります。フカフカのリクライニングシートで、簡易寝台として使えるくらい深くリクライニングします。SL大樹号では唯一のリクライニングシートということで人気があり、席が早く埋まりがちです。
座席の座り心地は大変いいですが、他の設備には設置されているテーブルがないため、座席で食事をとるのは難しいです。
2号車:展望車(12系客車)
運行開始からしばらく経ってから登場した客車です。客車の一角にオープンエアーの休憩スペースがあって、誰でも利用できます。
展望車の座席は他のタイプとは違い、4人掛けのボックスシートです。大きなテーブルが設置されていて、食事をとることができます。また、窓が開く唯一の設備です。これも、2号車に連結されています。
座席番号の振り方が独特なので、席を予約する際に注意が必要です。
編成によって、ドリームカーもしくは展望車の一方が連結されています。どちらが連結されているかは、公式ウェブサイトの運行予定表を参照すると分かります。
「SL大樹」号 座席の選び方~席番について~
簡易リクライニングシートとボックスシートでは座席の配置が全く異なりますが、席番の配列は両者で共通しています。
一般の特急列車のように、ABCD席で横一列になります。
【2号車・3号車】
A席側が西向きで、男体山・女体山や鬼怒川を望める上席です。D席側はその逆側で、車窓からの眺めは劣ります。
【1号車】
席番の配置が2号車、3号車とは反転し、D席側が西向きです。男体山・女体山や鬼怒川を望めます。
【2号車ボックスシートの留意点】
SL大樹号の2号車ボックスシートの席番配列が特殊で、連続した番号のAB席もしくはCD席で一つのボックスになります(例えば11AB・12ABで一つのボックス)。席番の希望を伝える際、注意しましょう。
一般的なJR列車のボックスシートは、一つの番号のA-D席で一つのボックスを占めます(例えば11番ABCD席で一つのボックス)。SL大樹号の配列は、JRとは異なるので、要注意です。
(1・3号車席番表)
(2号車席番表)
「SL・DL大樹」号 座席指定券のお値段
SL大樹号・DL大樹号乗車に必要な座席指定券の料金は、乗車区間により下記の通りです。乗車する車両に関係なく、料金は一律です。座席のタイプが異なる2号車に乗車するための追加料金がないことを覚えておくとよいでしょう。
● SL大樹号・SL大樹「ふたら」号【下今市駅ー鬼怒川温泉駅】
大人760円/子供380円
● SL大樹「ふたら」号【東武日光駅ー鬼怒川温泉駅】
大人1,080円/子供540円
● DL大樹号【下今市駅ー鬼怒川温泉駅】
大人520円/子供260円
乗車券について
紙のきっぷ(普通乗車券)だけではなく、交通系ICカードも使用できます。遠方から乗車する場合、株主優待乗車証を入手して通しで乗車するのも手です。
その他、日光・鬼怒川エリアをカバーする各種フリーきっぷやデジタルきっぷを乗車券として使用することもできます。フリーきっぷには、往復の乗車券分を含んだものの他、日光・鬼怒川エリアだけで使用できるフリーきっぷも発売されています。
筆者は、後者の「日光・鬼怒川エリア鉄道乗り放題きっぷ」大人500円/子供250円を購入してみました。
このきっぷは端末から発行されるのではなく、印刷されているポストカード大の常備券です。デザインが良いので、持ち帰ると良い記念になるでしょう。
その都度きっぷを購入する必要がなく、コスパが高いきっぷです(往復乗車すれば元が取れます)。日光までマイカーで来て、SL大樹号に乗車する場合、このきっぷがおススメです。
予約のしかた・きっぷの買い方
冒頭で申し上げた通り、SL大樹号は全車指定席の列車です。乗車券だけではなく、座席指定券を乗車する前に用意しておく必要があります。
その座席指定券を購入する方法は、以下のようにいくつかあります。東武鉄道の指定券は、これまでは東武線沿線でないと入手しにくかったです。しかし、現在では主な旅行会社の他、ネット予約サービスも利用できるようになりました。東武線沿線以外に住んでいても、ハードルは低くなったといえるでしょう。
座席指定券の発売時期~いつ買うか~
SL大樹号の座席指定券は、乗車日1か月前の午前9時00分から購入できます。
東武鉄道の指定券には、JR指定券のような事前受付のしくみはありません。しかし、SL大樹号の座席定員は多いので、繁忙期でない限り急がなくても指定券を買えるでしょう。
座席指定券の発売箇所(東武線の各駅・旅行会社)
座席指定券を紙のきっぷで受け取りたい場合、駅か旅行会社を利用します。
東武線の有人駅(本線系統)
東武鉄道直営の有人駅窓口で、座席指定券を購入できます。押上駅など、他社管理の駅では発売しません。
SL大樹号の座席指定券に限っては自動券売機では購入できず、駅員を通して購入します。券売機で購入できる東武線特急列車とは異なる点です。
本線系統の有人駅には端末機が完備されているので、その場ですぐに購入できます。号車の希望や席番の希望を出しやすいです。
※ 本線系統の駅:東上線系統以外のすべての路線にある駅
東武線の有人駅(東上線系統)
本線系統の駅と同じく、東上線・越生線の有人駅窓口でも座席指定券を購入できます。ただし、本線系統の駅に設置されている端末機が配置されておらず、手配と発券が手作業です。そのため、きっぷを受け取るまでに時間がかかることに留意しましょう。
手配が手作業になるため席番の希望をピンポイントで出せず、おまかせになるのが弱点です。細かな希望がある場合、ネット予約をするか、端末券を買える駅に行った方がよいです。
※ 池袋駅南口窓口では、他の駅と異なり端末券を購入できます。
野岩鉄道線・会津鉄道線の有人駅
東武線の有人駅に準じて、座席指定券を購入できます。ただし、これらの駅で購入する場合、手配が電話中継で手作業での発券になるため、時間的余裕が必要です。
主な旅行会社
店舗数が激減しましたが、東武トップツアーズのカウンター窓口にて、東武線特急列車やSL大樹号の座席指定券を購入できます。東武トップツアーズで東武線のきっぷを購入する際、取扱手数料はかかりません。この場合も、席番の希望は難しいようです。
東武トップツアーズで指定券を購入すると、このような船車券を入手できます。
他の旅行会社でも東武線のきっぷを購入できますが、取扱手数料がかかることがあるので、留意しましょう。
座席指定券の発売箇所(インターネット・電話予約)
インターネット上でオンライン決済すれば、チケットレスで乗車できます(駅で決済すると紙のきっぷ)。
ネット予約サービス【駅で決済】
東武線のネット予約サービスでは、特急列車用とSL大樹号用で異なるシステムが使用されているため、それぞれ別のサイトで予約購入を行います。
SL大樹号の座席指定券の予約購入は、専用の予約サイト「SL大樹・DL大樹インターネット購入・予約サービス」から行います。
ネット予約を行う際、予約だけしておいて駅で決済する方法と、クレジットカードでオンライン決済する方法があります。
駅で決済する場合、ネット予約時に席番を確定できません。駅で購入するのと同じ手順のため、ネット予約する意味があまりありません。ただし、列車が満席になりそうであれば、席を仮に押さえておくためにこの方法を活用できるでしょう。
この方法では、予約日を含めて7日間以内に駅で決済する必要があるので、遠方に居住している場合には活用が難しいです。駅で決済する際、乗車券が必要な場合は同時に買うことができます。
※ 一般の特急列車と違い、SL大樹号は券売機でのネット予約受け取りができません。駅員に依頼しましょう。
ネット予約サービス【クレカオンライン決済】
クレジットカードでオンライン決済する場合、予約時に席番が確定し、座席指定券がチケットレスになります。席番の希望を駅員に伝える手間がないので、気楽です。
ネットでオンライン決済できるのは、座席指定券のみです。乗車券は別に用意する必要があります。
上記の専用サイトの他、「NIKKO MaaS」というサイトでもSL大樹号の予約購入が可能です。利用する際には、会員登録が必要になります。
駅で決済する場合にはあまり意味がないネット予約ですが、オンライン決済ができれば大変有用です。紙のきっぷにこだわりがなければ面倒がなく、この方法がおススメです。
東武沿線から遠方に住んでいる場合や無人駅から乗車する場合、駅員を通してきっぷを購入できないため、ネット予約を活用する価値があると思います。
電話予約
東武鉄道のお客さまセンターにて電話予約もできますが、詳細は割愛します。
乗車するともらえるもの
SL大樹号に乗車すると、記念乗車証と「SLアテンダント通信」という読み物をもらえます。定期的に更新されているため、リピートした時に同じものを受け取る可能性は少なく、飽きがこないです。
記念乗車証
SL大樹号に乗車すると、記念乗車証を1人につき1枚もらえます。その乗車証には、乗車日が記載されたスタンプが押されています。
列車名・号数別に独自の記念乗車証が用意されていて、すべての列車に乗車すると乗車証をコンプリートできます。何枚か集めると景品をもらえるのが楽しみです。
SLアテンダント通信
2017年に列車の運行が開始されて以来、列車のアテンダントさんが制作した「SLアテンダント通信」というリーフレットが配布されています。列車のデビュー時に第1号が発刊され、それ以降定期的に更新されています。
列車にまつわる話題や日光地区の観光スポットの紹介などの情報が掲載されていますが、すべて手書きです。1人1枚配布されるので、乗車した良い記念になるでしょう。
まとめ
東武鉄道の観光列車「SL大樹」号に乗車するためには、乗車券の他に座席指定券が必要です。座席指定券の料金は一律ですが、乗車券の買い方には多くのパターンがあります。
日光・鬼怒川地区だけ乗車する場合、格安なフリーきっぷが発売されています。下今市駅で乗り換えず通しで乗車する場合、交通系ICカードや株主優待乗車証など、自分に合ったきっぷを選びましょう。
座席指定券の料金は、号車を問わず一律です。2号車に乗車する場合でも、差額はありません。
ネット予約でオンライン決済できれば最も便利ですが、発売箇所によっては手売りきっぷを入手できる場合があります。
列車に乗車すると、記念乗車証とSLアテンダント通信を1人あたり1部づつもらえるため、良い記念になります。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
Appendix:ネット予約の手順
ここでは、東武鉄道「SL大樹・DL大樹インターネット購入・予約サービス」ウェブサイトにてSL大樹号のネット予約を行う際の手順を、逐一説明します。
ここでは、ネット予約で席を仮押さえしてから駅で決済する流れでご説明したいと思います。
(1) 日にち、時間帯、区間を指定して空席照会すると、予約できる列車が発車時刻順に表示されます。オンライン決済する場合「座席を指定して購入」、駅で決済する場合「予約のみ」を選択します。
(2) オンライン決済する場合、希望する席番を指定します。駅で決済する場合、座席を選択できないため、このステップはありません。
(3) 予約する列車と座席指定券の金額を確認して、次に進みます。
(4) 電話番号とメールアドレスを入力してから、規約に同意します。
(5) 予約が完了すると、6桁の予約番号が表示されます。予約当日を含めて7日間以内に駅で決済してきっぷを受け取ります。
参考資料 References
● 「SL大樹」公式ウェブサイト(東武鉄道)2024.8閲覧
● 「SL大樹・DL大樹 インターネット購入・予約サービス」ウェブサイト(東武鉄道)2024.8閲覧
当記事の改訂履歴 Revision History
2024年9月03日:初稿 修正
2024年8月11日:初稿 修正
2024年8月10日:当サイト初稿(リニューアル)
2023年02月05日:前サイト初稿
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