JR東日本が50歳以上の人々に向けて展開する「大人の休日俱楽部」。北陸新幹線に割引で乗車できることを期待し、入会する方が多いのではないでしょうか。
ここで忘れたくないのが、北陸新幹線はJR東日本とJR西日本が共同で運営していることです。JR東日本区間については「大人の休日俱楽部」会員割引が当然に適用されますが、JR西日本区間については割引はありません。
乗車区間に割引の対象区間と対象外区間が含まれるため、きっぷの買い方が悩みどころです。一体どのような買い方をしたら、会員割引のメリットを享受できるのでしょうか。

JR西日本区間が含まれる場合「大人の休日俱楽部」割引の適用方法に決定打がないため、残念ながら所定運賃・料金を支払うしかありません。旅行条件によっては「大人の休日俱楽部会員限定 北陸フリーきっぷ」を購入するとおトクです!
この記事では、「大人の休日俱楽部」会員が北陸新幹線のきっぷを購入する際、乗車区間がJR西日本区間またがりとなる場合に留意しておきたい点をお話しします。公式情報だけでは理解しづらいため、この記事がヒントになれば幸いです。
- 一部の例外を除き、上越妙高駅で運賃・料金計算を打ち切ると不利になること
- 会員割引を適用できる場合、ネットではなく駅のみどりの窓口で購入すること
- ネット予約「えきねっと」の計算結果が適切ではないため、参考にできないこと
「大人の休日俱楽部」の弱点である北陸新幹線

JR東日本・JR北海道管内で威力を発揮する「大人の休日俱楽部」ですが、JR西日本による運行区間が含まれる北陸新幹線については弱みがあります。
まず、北陸新幹線の運営形態を押さえた上で、会員割引の対象外となることで影響を受ける場合と、影響を受けないで済む場合を検討します。
北陸新幹線の運営形態
まず、北陸新幹線のどの区間がJR東日本管轄あるいはJR西日本管轄であるかをご説明します。以下の図をご覧ください。

現在開業済みの区間は、東京駅(東京都千代田区)から敦賀駅(福井県敦賀市)までの575.6kmです。その内、東京駅から上越妙高駅(新潟県上越市)まで281.9kmの区間がJR東日本による運営、上越妙高駅から敦賀駅までの293.7kmの区間がJR西日本による運営です。
両社の境界駅である上越妙高駅には「かがやき」号が停車しないこともあり、JR東日本の乗務員とJR西日本の乗務員が途中の長野駅(長野県長野市)で交代します。
北陸新幹線以外の整備新幹線はいずれかのJR会社が単独で運営していますが、北陸新幹線に限っては2社による共同運営です。
このような運営形態が、北陸新幹線の運賃・料金体系に影響をもたらしています。
当記事でお話しする懸念がないユーザー
「大人の休日俱楽部」会員割引が適用されるのは、JR東日本およびJR北海道管内の全区間です。乗車区間によって、影響を受ける場合と受けない場合があります。
JR東日本区間だけ乗車するユーザー
北陸新幹線の場合、東京駅から上越妙高駅までがJR東日本区間に該当します。上越妙高駅から先に進まない限り、当記事で説明する懸念を考慮する必要はありません。
ジパング倶楽部会員
また、JR全線で会員割引が適用となる「ジパング俱楽部」会員については、そもそも会社の境界を考える必要がありません。何ら制限がないため、心配には及びません。
JR西日本またがりで乗車するユーザーが影響を受ける
北陸新幹線が共同運営であることによって影響を受けるのが、JR東日本とJR西日本の区間をまたがって乗車する場合です。
JR東日本およびJR西日本で発売される割引きっぷの対象区間は、当然のことながら自社エリアに限定されます。そのため、2社にまたがって乗車する場合には割引の対象外となり、所定運賃・料金を支払う必要があるのです。
北陸新幹線における運賃・料金体系

新幹線に乗車するには、乗車券の他、新幹線特急券を購入します。また、グリーン車やグランクラスに乗車する場合には、該当するクラスのグリーン券が併せて必要です。
北陸新幹線における運賃・料金計算の考え方は、下図の通りです。

運賃(乗車券)
乗車区間がどの会社に含まれるかを問わず、乗車区間の営業キロを通算します。通算した営業キロに対する運賃を求めます(基準額)。基準額については、両社とも共通です。
なお、2026年春にJR東日本の運賃が引き上げとなった場合、JR東日本区間に関して加算額を算入することになります。
例えば、東京駅から金沢駅(石川県金沢市)まで営業キロ450.5kmの運賃は、7,480円です。
新幹線特急料金
北陸新幹線の新幹線特急料金については、JR東日本区間とJR西日本区間でそれぞれ打ち切るのではなく、全区間を通算します。線区別に料金計算を打ち切る整備新幹線が多い中で、北陸新幹線は例外と言えるでしょう。
運賃同様、乗車区間の特急料金をそのまま適用します。
東京駅から金沢駅までの特急料金は、6,900円です(通常期)。繁忙期・最繁忙期・閑散期には、一定の金額を加算・減算します。自由席を利用する場合、通常期の金額から530円を減算します。
グリーン料金(11号車)
グリーン料金に限っては、上越妙高駅を境界駅として、JR東日本区間とJR西日本区間でそれぞれ打ち切って計算します。
東京駅から金沢駅までのグリーン料金は、下表の通りです。
乗車区間 | 営業キロ | 料金 |
東京駅・上越妙高駅 | 281.9km | 4,190円 |
上越妙高駅・金沢駅 | 168.6km | 2,800円 |
合計 | 450.5km | 6,990円 |
上述した指定席利用の新幹線特急料金から530円を減算した上で、グリーン料金を加算して料金を求めます。

北陸新幹線がJR東日本区間とJR西日本区間に分かれるため、それぞれの区間を分割で購入することも考えられます。果たして、それは有効でしょうか?
きっぷの分割購入は有効か~会員種別に応じたきっぷの買い方~

「大人の休日俱楽部割引」会員割引がJR東日本区間に限られることから、境界駅の上越妙高駅できっぷを分割して当該割引を適用することが考えられます。
ここでは、ネット予約サービス「えきねっと」で試算した結果を見ながら、分割購入した方がよいのか(割引適用)、全区間通しで購入した方がよいのか(無割引)を検討していきましょう。
運賃・料金のシミュレーション
運賃・新幹線特急料金・グリーン料金の各別に、各会員区分の運賃・料金を算出します。
運賃

「えきねっと」で北陸新幹線の運賃・料金を計算すると、「大人の休日俱楽部」割引に関しては上越妙高駅で分割した結果が表示されてきます。
乗車区間 | 無割引 | 大休05 | ジ30 | 大休30 |
東京駅・上越妙高駅 | 7,480 | 4,910 | 5,230 | 3,610 |
上越妙高駅・金沢駅 | 0 | 3,080 | 0 | 3,080 |
合計 | 7,480 | 7,990 | 5,230 | 6,690 |
運賃については、全区間通しで計算した方が低額です。「大人の休日俱楽部」割引を適用した結果、無割引の運賃および「ジパング倶楽部」割引の運賃よりも高額となってしまいます。
新幹線特急料金【普通車指定席:通常期】

新幹線特急料金についても、運賃と同様です。
乗車区間 | 無割引 | 大休05 | ジ30 | 大休30 |
東京駅・上越妙高駅 | 6,900 | 4,050 | 4,830 | 2,980 |
上越妙高駅・金沢駅 | 0 | 3,170 | 0 | 3,170 |
合計 | 6,900 | 7,220 | 4,830 | 6,150 |
北陸新幹線の特急料金については、前述の通り両社の区間を通算します。したがって、上越妙高駅で分割すると割高になります。
グリーン料金【通常期】

この計算結果には、グリーン料金の他、新幹線特急料金が含まれます。グリーン料金に限ってはもともと上越妙高駅で分割することになっていますが、特急料金については全区間で通しです。
乗車区間 | 無割引 | 大休05 | ジ30 | 大休30 |
東京駅・上越妙高駅 | 13,360 | 7,530 | 9,350 | 5,540 |
上越妙高駅・金沢駅 | 0 | 5,440 | 0 | 5,440 |
合計 | 13,360 | 12,970 | 9,350 | 10,980 |
「大人の休日俱楽部」ミドル会員に限り、上越妙高駅で分割すると無割引の特急・グリーン料金よりも低額となります。ただし、着駅が金沢駅でない場合結果が異なる可能性があるので、個別に試算が必要です。ジパング倶楽部会員の場合、上越妙高駅で分割すると高額になります。

これらのシミュレーションの結果から、会員種別ごとに適切なきっぷの買い方が分かります。
きっぷの買い方「ジパング俱楽部」会員
ジパング倶楽部会員手帳を持っている場合、駅のみどりの窓口で紙のきっぷを購入しましょう(全区間について20%もしくは30%割引)。この場合には必ず会員手帳が必要で、購入回数枠の1回分を消費することに留意してください。
なお、乗車区間がJR東日本区間で完結する場合は会員手帳は不要で、何度でも30%引きできっぷを購入できます(きっぷをネットで買っても問題なし)。
きっぷの買い方「大人の休日俱楽部」ミドル会員
乗車区間・設備によって、きっぷの買い方が異なります。
グリーン車を利用する場合【東京駅・金沢駅間】
東京駅・金沢駅間に限り、当該区間の営業キロの関係で例外的にグリーン券の区間分割が有効です(JR東日本区間に会員割引が適用されます)。普通乗車券については、全区間を通しで購入します(無割引)。
- 乗車券:無割引の所定運賃を全区間通しで
- 特急・グリーン券(JR東日本区間):東京駅・上越妙高駅間に会員割引を適用
- 特急・グリーン券(JR西日本区間):上越妙高駅・金沢駅間を無割引で
きっぷの買い方がやや複雑なので、駅窓口で相談した方がよいでしょう。
その他の場合
大人の休日俱楽部会員割引を適用すると割高になるため、全区間のきっぷを無割引で購入せざるを得ません。購入箇所には限定はなく、ネットで購入しても駅で購入しても差し支えありません。
北陸新幹線をJR西日本またがりで利用する場合に割引がきかないのが、「大人の休日俱楽部」ミドル会員の弱点です。この弱点を補うために発売されている「大人の休日俱楽部会員限定 北陸フリーきっぷ」を利用するとよいでしょう(後述)。
「大人の休日俱楽部」割引適用時の「えきねっと」の挙動に注意

首都圏に在住するほとんどの北陸新幹線ユーザーが、ネット予約サービス「えきねっと」を利用していると思われます。したがって「えきねっと」の動作をよく知っておく必要があります。
「大人の休日俱楽部」会員割引が絡む場合「えきねっと」での検索が煩雑であるため、注意が必要です。実際に北陸新幹線の運賃・料金を検索すると、会員割引に関して正しい計算結果が得られません。
「新幹線eチケット」であれ、紙のきっぷであれ、「えきねっと」の検索結果からそのまま購入を完了しないようにしてください。
注意喚起として、計算結果の見方について詳しくご説明したいと思います。

北陸新幹線で最もユーザーの多いと思われる区間の東京駅・金沢駅間における新幹線特急料金の計算結果は、上述した通りです。
ここで注意すべきことは、ミドル会員用の割引料金(7,220円)が、無割引の所定料金(6,900円)よりもなぜか高く表示されることです。この場合、ミドル会員の方は無割引の所定料金を選択する必要があります。
ジパング会員の場合も上述した通り、この金額(6,150円)よりも安くなります。
目を疑う計算結果ですが、全区間通しの料金ではなく、以下の料金の合計が表示されているために発生する珍現象です。
- 東京駅・上越妙高駅間の会員割引適用料金
- 上越妙高駅・金沢駅間の無割引の料金
上越妙高駅で料金計算が分割されているため、このような現象が生じているわけです。

新幹線特急料金だけではなく、普通乗車券でも同じ現象が見られます。これも、全区間通しの運賃ではなく、以下2区間の合算となっています。
- 東京駅・上越妙高駅間の会員割引適用運賃
- 上越妙高駅・金沢駅間の無割引の運賃
いくらなんでも、ミドル会員割引の運賃(7,990円)が無割引の運賃(7,480円)を上回るのは不審に感じるのではないでしょうか。
「新幹線eチケット」に関しては、大人の休日俱楽部・ジパング倶楽部割引がそもそも適用されないため、検索結果に表示されません。そのため、迷いが生じることはないでしょう。
「大人の休日俱楽部会員限定 北陸フリーきっぷ」がおススメ!

ミドル会員にとっての味方が、4日間にわたって有効な「大人の休日俱楽部会員限定 北陸フリーきっぷ」です。
発駅からフリー乗車区間まで北陸新幹線の普通車指定席を利用できて、フリー区間内の北陸新幹線(普通車自由席)および並行在来線等に乗り放題と、かなり強力なきっぷです。値段は、発駅により異なります。
- 東京都区内発着:24,000円
- 大宮地区発着:23,000円
3泊4日までの期間であれば、無割引のきっぷを購入するよりも断然安く安く旅行できます。
何より、このフリーきっぷを利用すれば、きっぷを分割するとか、割引があるとかないとかといったことを心配する必要がありません。筆者としても、両手を挙げておススメします。
このフリーきっぷの詳細については、別記事を投稿する予定です。
まとめ
JR東日本・JR北海道管内の全区間のきっぷが割引になる「大人の休日俱楽部」ですが、北陸新幹線を利用する場合、要注意です。
北陸新幹線は、JR東日本とJR西日本が共同で運営しているのが、他の新幹線と比べて特異な点です。そのため、JR西日本の区間については「大人の休日俱楽部」会員割引が適用されません。
JR東日本とJR西日本それぞれの区間をまたいで乗車する場合、どのようなきっぷの買い方をしたらいいのか、悩むところです。
両社の境界駅である上越妙高駅で運賃・料金計算を打ち切って、JR東日本の区間だけ割引を適用することが考えられます。しかし、区間を分割しても思ったような効果がなく、一部の例外を除き全区間にわたって所定運賃・料金を支払うことになります。
これが、まさに「大人の休日俱楽部」の弱みです。
しかし、この弱みを補うフリーきっぷが発売されています。普通車指定席を利用できる「大人の休日俱楽部会員限定 北陸フリーきっぷ」は、3泊4日以内の旅程で活用できます。東京駅・金沢駅間を単純往復すれば元が取れるのが救いです。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● 「大人の休日俱楽部」会員サイト(JR東日本)2025.4閲覧
当記事の改訂履歴
2025年4月21日:当サイト初稿(リニューアル)
2022年3月10日:前サイト初稿(原文作成)
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