関東近辺で硬券が現役のローカル鉄道5選~昭和レトロなきっぷで懐かしい乗り鉄を愉しむ~

首都圏近辺で購入できる硬券 きっぷ鉄(運賃規則・収集)

「硬券」と呼ばれている、昔ながらの厚紙の鉄道きっぷ。かつては当たり前だった小さな紙片が、今では貴重な存在になっています。実際、現在発売される鉄道きっぷのほとんどは、券売機や端末機から発行されています。

驚くべきことに、硬券をいまだに発売している鉄道会社が、関東近辺に何社か残っています。昭和の香りがただよう駅で硬券を買い、レトロな車両に乗るという体験を味わえる場所が、東京から日帰りで行ける範囲にあるのです。

硬券の乗車券を買える鉄道会社は、千葉県内に3社が集中しています。東京からはいずれも近場で、列車に乗るだけでも訪れる価値があります!

この記事では、首都圏から容易にアクセスでき、今なお手売りの硬券を購入できる5つの鉄道会社をご紹介します。各社の概要や硬券が買える駅を、写真を交えて詳しくご説明していきます。

端末券や交通系ICカードが主流の今だからこそ、硬券を求めることには特別な魅力があります。鉄道ファンのみならず、昭和ノスタルジーを感じてみたい方に向けて、昔懐かしいきっぷを探っていきます。珍しい体験を味わいに、硬券を求める乗り鉄に出かけてみませんか。

きっぷのチケットレス化の流れの中で生き残る硬券

流鉄馬橋駅
硬券が今も発売されている流鉄馬橋駅

きっぷを発売する業務(出札業務)は、鉄道会社の雑多な業務の中でも、常に合理化の対象になります。

現在から50年以上前にはすでに、近距離きっぷ自動券売機が都市部で導入されていました。そして、自動改札が増えるにつれてきっぷが磁気券に変わり、手売りのきっぷは激減しました。

現在では、自動券売機や窓口にある端末からきっぷが発行されることがほとんどです。その上、JR各社や大手鉄道会社を中心にきっぷのチケットレス化が進んできて、紙のきっぷさえなくなりそうな気配がします。

そんなわけで、対面販売で駅員から直接きっぷを買う体験自体が少なくなりました。しかし、すべての鉄道会社で出札業務を自動化できるわけではありません。地方の小規模な鉄道会社では、出札業務が人の手によって行われていて、手売りのきっぷが発売されるケースがいまだに残っています。

そのような鉄道会社では、厚紙に必要事項を印刷した上で細かく裁断した「硬券」と呼ばれるきっぷがいまだに発売されています。

硬券を使用している鉄道会社は、近年激減しました。そのようなことで、硬券を買って列車に乗る体験は非常に希少になり、それ自体に価値が出てきました。

それでは、どの鉄道会社で硬券が残っているのかを、具体的にお話ししていきます!

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首都圏からのアクセスが容易で硬券を入手可能な鉄道会社

硬券として発売されるきっぷには、入場券と普通乗車券があります。そのうち、硬券の入場券を扱う会社は多くあるものの、列車には乗車できません。そんなわけで、当記事では硬券の普通乗車券を購入できる鉄道会社をご紹介することにします。

硬券を発売する鉄道会社の所在を記した首都圏の白地図

SuicaやPASMOなどの交通系ICカードを利用できない鉄道会社の中でも、発券端末や券売機を全く導入していないか、部分的な導入となっているのは、関東近辺では次の5社です。

  • 上信電鉄(群馬県)
  • 銚子電鉄(千葉県)
  • 流鉄(千葉県)
  • 小湊鐡道(千葉県)
  • 岳南電車(静岡県)

これらの会社の内、銚子電鉄の直営駅および小湊鐡道の一部の駅、そして岳南電車の全駅には券売機がなく、きっぷを買うと必ず硬券が出てきます。上信電鉄の主要駅や流鉄の全駅には券売機が導入されていますが、希望すれば硬券を出してもらえます。

偶然なことに、千葉県内の小さな鉄道会社には硬券が多く残っている形です。

ここから、各社別にご紹介していきます!

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上信電鉄(群馬県)

上信電鉄普通列車

上信電鉄線は、上越新幹線が停車する高崎駅(群馬県高崎市)から下仁田駅(群馬県下仁田町)までの区間33.7kmを結ぶ路線です。沿線には、世界遺産富岡製糸場最寄りの上州富岡駅(群馬県富岡市)があります。そのため、地元ユーザーのみならず観光客の利用も多いです。

上越新幹線・高崎線高崎駅へのアクセス

東京駅から高崎駅に向かうには、上越新幹線を利用すると乗り換えがなく、最も便利です。普通車自由席利用で約4,500円かかりますが、50分程度で着きます。

在来線の高崎線を利用しても、東京駅から乗り換えなしでアクセスできます。運賃が約2,000円と新幹線よりも安いですが、所要時間が2時間弱かかります。

硬券の発売状況(発売駅・券種)

直営駅の高崎駅、吉井駅、上州富岡駅および下仁田駅には券売機が設置されています。ただし、各駅には硬券も常備されていて、希望すれば窓口で購入できます。

その他の駅でも、日中時間帯に出札窓口が開いています。それらの駅には券売機が設置されていないため、きっぷを購入すると必ず硬券です。

上信電鉄で発売されている硬券

ほとんどが片道乗車券ですが、往復乗車券が残っている駅があります。高崎駅ゆきのきっぷと、その他の駅ゆきのきっぷでは、地紋の色が異なります。

小駅の駅員さんがとても親切で、きっぷ収集にも快く対応していただけます。

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銚子電鉄(千葉県)

銚子電鉄普通列車

千葉県の港町、銚子市内を走る零細な鉄道会社です。鉄道事業以外に濡れせんべいなどの製菓事業にも力を入れていて、話題の多い会社です。

1923年の開業から100年以上経つ、歴史ある路線でもあります。

総武本線銚子駅へのアクセス

東京駅から銚子駅に向かうには、特急「しおさい」号に乗車するのが最も便利です。所要時間は約2時間で、運賃・料金は概ね3,900円です。運行本数が少ないのが難点です。

その点、東関東自動車道を通る高速バスが高頻度で運行されていて、便利です。しおさい号を利用するのに比べて、所要時間が大きく変わらないにもかかわらず、運賃が2,700円と廉価です。

硬券の発売状況(発売駅・券種)

JR銚子駅構内にある銚子電鉄銚子駅以外の線内有人駅(仲ノ町駅・観音駅・笠上黒生駅・犬吠駅・外川駅の5駅)では、硬券の乗車券を購入できます。銚子電鉄の駅には券売機がないため、駅で線内のきっぷを買う場合には必ず硬券を手にします。

銚子電鉄各駅で購入できる硬券

購入駅や行き先によって、硬券のサイズやデザインが微妙に異なります。きっぷ収集が好きな人にとっては、楽しい路線です。

また、沿線には醬油工場、銚子港、犬吠埼灯台などの観光スポットが多いため、乗り鉄以外の観光にも好適です。

流鉄(千葉県)

流鉄普通列車

千葉県松戸市および流山市内を走る、小さな鉄道会社です。JR常磐線と接続する馬橋駅(千葉県松戸市)から流山駅(千葉県流山市)までの5.7kmを結ぶ路線です。

この路線の強みは、硬券乗車券を取り扱う鉄道会社の中では、東京駅から最も近いことです。東京駅から馬橋駅までの距離は、わずか24.9kmです。

沿線は住宅街で、観光地は特にありません。しかし、硬券きっぷを買って古い列車に乗るという原始的な体感を手軽に味わえます。

流鉄へのアクセス(馬橋駅・鰭ヶ崎駅)

流鉄とJR常磐線の接続駅、馬橋駅には、常磐線各駅停車でアクセスします。東京駅からはJR常磐線で北千住駅もしくは松戸駅に向かい、常磐線各駅停車に乗り換えます。

秋葉原駅からつくばエクスプレスに乗車して南流山駅に向かい、徒歩で鰭ヶ崎駅(千葉県流山市)にアクセスする方法もあります。

硬券の発売状況(発売駅・券種)

流鉄各駅で購入できる硬券

線内にある6駅すべてが有人駅で、硬券が常備されています。各駅には券売機が完備されていますが、希望すれば硬券を出してもらえます。

硬券の口座数は、各駅によって異なります。大人用の口座はほぼ完備していますが、小児券は非常に少ないです。

小湊鐡道(千葉県)

小湊鐡道キハ40

小湊鐡道線は、千葉県市原市内を走るローカルな路線です。里山トロッコやキハ40型気動車が走っていて、鉄道ファンにとってはわざわざ乗りに行く価値があります。列車に乗るだけでも楽しいですが、一部の有人駅では硬券が手に入ります。

小湊鐡道線へのアクセス(内房線五井駅・いすみ鉄道上総中野駅)

小湊鐡道線へのゲートウェイとなる駅は、内房線五井駅(千葉県市原市)です。

最も便利なのが、東京駅から五井駅まで乗り換えなしの総武快速線です。所要時間はちょうど1時間で、運賃は約1,000円です。また、京葉線経由の列車でアクセスすることも可能です。

終点の上総中野駅(千葉県大多喜町)で、いすみ鉄道線に接続しています。ただし、運行本数が少ないため、あらかじめ予定を組む必要があります。

硬券の発売状況(発売駅・券種)

JR内房線五井駅寄りの駅には券売機が設置されていますが、上総牛久駅、里見駅、養老渓谷駅には券売機が設置されていません。駅員からきっぷを購入すると、硬券が手に入ります。

小湊鐡道月崎駅で購入した硬券

月崎駅の出札業務については、駅正面にある雑貨店に簡易委託されています。駅舎内で駅員からきっぷを買うのではなく、普通のお店できっぷを買うというのが、とても希少な体験です。

国鉄時代の車両に硬券で乗るというノスタルジックな体験を味わえるのは、東京近郊では小湊鐡道が随一です。

岳南電車(静岡県)

岳南電車普通列車

静岡県富士市内には、岳南電車が走っています。JR東海道本線に接続する吉原駅から岳南江尾駅までの区間9.2kmを結んでいます。夜間に工場地帯を通る電車「夜景電車」に乗車すると、とても幻想的です。

東海道本線吉原駅へのアクセス

東京駅から吉原駅に向かうには、東海道新幹線に乗車します。三島駅で、在来線の東海道本線に乗り換えます。全体の所要時間は概ね1時間30分で、運賃・料金は約4,800円です。

もちろん、東京駅から在来線で吉原駅まで向かうこともできます。所要時間が約2時間30分かかりますが、新幹線特急料金を節約できます。

硬券の発売状況(発売駅・券種)

有人駅の吉原駅と吉原本町駅では、硬券のきっぷが発売されています。吉原本町駅には券売機がないので、きっぷを買うと硬券が出てきます。

岳南電車の駅で購入できる硬券

また、岳南富士岡駅でも時間限定で硬券を入手できます。しかし、この駅の窓口が営業しているのは平日の早朝のみなので、難攻不落です。

無人駅が多いため、きっぷを買わずに乗車することが多いです。しかし、きっぷを買えれば硬券で乗車する体験が得られます。

出かける前に準備を万全に

硬券を購入する時、駅では代金を現金で決済します。当記事でご紹介した鉄道会社では、キャッシュレス決済には対応していません。できるだけ小銭を準備してから、出かけたいです。

また、硬券はとても小さな紙片です。そのまま持っていると紛失しやすいので、しまっておく場所を決めておきましょう。例えば、お財布の中でもいいですし、硬券を入れておくケースを別に用意するのも得策です。

まとめ~硬券へのいざない~

首都圏近辺で購入できる硬券

硬券は、記載事項が印刷された厚紙を小さく裁断した小さな紙片(きっぷ)です。昔は、鉄道きっぷといえば硬券を指しましたが、現在残っているケースはまれになりました。

チケットレス化の流れが進む中にあっても、硬券が手売りで残っている鉄道会社が、関東近辺に数社残っています。いずれの会社にも交通系ICカード(Suica・PASMO)が導入されておらず、現金できっぷを買います。

上信電鉄、銚子電鉄、流鉄、小湊鐡道、岳南電車の5社の有人駅では、硬券が発売されています。希望すれば硬券を買えるケースと、希望しなくても必然的に硬券を買うことになるケースがあります。

懐かしい硬券を買って、昭和時代から活躍している古い車両に乗車するというノスタルジックな体験を得るために、お出かけしてみてはいかがでしょうか。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

当記事の改訂履歴

2024年7月03日:初稿 修正

2024年6月17日:初稿 修正

2024年5月13日:当サイト初稿

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