「大人の休日俱楽部」の会員になると、「大人の休日俱楽部パス」に限らず、普通乗車券や特急券・グリーン券(以下「乗車券類」)も会員割引で購入できます。
ところで、前もって購入した割引きっぷを往々にして変更しなければならない場面があります。例えば、天気に恵まれず、お出かけを別の日に変更しようといった場合です。
JRの乗車券類については、旅程を変更する必要が出たら1回だけ乗車変更できるため、いきなり払いもどす必要はありません。その場合、払戻手数料が発生しないわけです。
ところが、購入した乗車券類に「大人の休日俱楽部」会員割引が適用されていると、実は一筋縄ではいかないのです。乗車区間の変更が伴う複雑なケースになると乗車変更ができず、払戻手数料を支払う羽目になったケースを、筆者も多く経験しました。
払いもどしを余儀なくされるケースが一体どのような条件で生じるか、皆さまも疑問に思われているのではないでしょうか。

無割引の乗車券類の乗車変更が比較的柔軟である一方、「大人の休日俱楽部」会員割引きっぷに関しては制限が多いです。それらの取扱方に大きな開きがあるため、乗車変更できると思っても払いもどしになるケースがしばしば生じます。
この記事では、「大人の休日俱楽部」会員割引が適用された乗車券類の乗車変更について、条件や注意点を転ばぬ先の杖として詳しくまとめました。
思ったように乗車変更できなくて釈然としない方にとって、この記事がヒントになれば幸いです。
- 旅行開始前でも乗車変更に厳しい制限があるため、間際まで購入を保留すべきこと
- 旅行開始後の乗車変更は不可能で、別にきっぷを購入しなければならないこと
- 払いもどしについては一般のルールが適用されるため、特有の制限はないこと
「大人の休日俱楽部」割引が適用された乗車券類とは

50歳以上の人が、JR東日本(ビューカード)が発行する「大人の休日俱楽部」クレジットカードを持つと、当該カードの会員として各種きっぷの割引を受けられます。
「大人の休日俱楽部」会員が購入できるきっぷとして、全線が乗り放題の「大人の休日俱楽部パス」がよく知られています。しかし、一定の距離以上乗車する場合、JR東日本・北海道エリアで完結する任意の経路の乗車券類がいつでも割引価格で購入できるのです(ただし、発売除外期間があります)。
このカードを持つだけで、オーダーメイドで旅程を組み、割引価格で乗車券類を購入することが可能です。そのため、東日本の鉄道旅行が好きな人には欠かせません。
ピークシーズンにおける最繁忙期以外であればいつでも割引が適用されるため、頻繁に出かけるユーザーにとっては会費に見合う有用なサービスです。「大人の休日俱楽部パス」の利用期間に限らず、割引の恩恵を受けられます。
例えば、東京から北陸新幹線と特急「しなの」号に乗車して松本駅(長野県松本市)に向かい、特急「あずさ」号で東京に戻る場合、特急券・グリーン券を含む乗車券類が割引になります。

これが、この経路で購入した乗車券類です。券面には、割引が適用された証として[大休05]が印字されています(ミドル会員5%引き)。
割引が適用された乗車券類を思ったよりも自在に購入できることが、お分かりではないでしょうか。
「大人の休日俱楽部」割引きっぷの乗車変更におけるエピソード
ここでは、「大人の休日俱楽部」会員割引きっぷを購入した後、乗車変更を申し出た実例を共有します。乗車変更が可能だったものと乗車変更できずに払いもどしとなったものが含まれます。
乗車変更がOKの事例【旅行開始前】
乗車区間や列車を全く変更せず、日にちだけを変更した事例です。当初予定していた日の天気が悪く、日にちを前日に前倒ししました。

これは、大宮駅・勝田駅間の普通往復乗車券に大人の休日俱楽部割引を付けたものです。往復で201km以上の割引条件(購入当時)は変わらず、変更後も割引が付いています。乗車変更した証として、券面には[乗変]と表示されています。

上記の普通乗車券と同時に購入した特急券です。変更前も変更後も割引適用であるため、問題なく乗車変更できます。
乗車変更がNGの事例【旅行開始前】
旅行開始前に目的地を変更したくなり、買っておいた乗車券類を一旦払いもどしました。

これは、大宮駅・東武日光駅間の特急券です。この駅間の距離はもともと通算で201km以上という条件(購入当時)を満たしていません。ただし、特急券については距離に関係なく割引を付けられるため、会員割引を適用していました。

乗車券をすべて払いもどしてから、特急券の乗車変更を行おうとしました。特急券単独では割引が付かないため、無割引の特急券として変更しようとしたのですが、それができず最終的に払いもどしとなりました。乗車前日に払いもどしたため、特急券の額面2,040円に対し、30%分の手数料(610円)ががっぽりと徴収されました。
この理由は後述しますが、「大人の休日俱楽部」会員割引きっぷ・無割引の乗車券類(ノーマル)相互の乗車変更を行わないこととなっているため、払いもどしが必要でした。
乗車変更がNGの事例【旅行開始後】
会員割引適用の普通乗車券を使用開始してから、同時に購入しておいた新幹線特定特急券が不要となり、他の特急券に乗車変更しようとしました。乗車変更を申し出たタイミングが、ちょうど旅行を終了し、発駅に帰着した時でした。

これは、小山駅・大宮駅間の新幹線特定特急券です。同時に購入した普通乗車券に大人の休日俱楽部割引が適用されており、この特急券も距離にかかわらず当該割引が適用されています。

駅のみどりの窓口で乗車変更したい旨申し出ましたが、旅行開始後の乗車変更は一切できず、払いもどすしかないと言われました。このケースでも、特急券の額面950円に対し、払戻手数料220円を徴収されました。

払戻手数料を取られるたびに、ワナにはめられたような気分になりました。乗車変更が成立するための条件が、いささか厳しすぎるのではないでしょうか。
複雑な「大人の休日俱楽部」割引きっぷの発売条件をおさらい

旅程を自在に組める会員割引きっぷですが、割引が適用されるための条件が結構複雑です。後述する乗車変更のための条件を含めると、割引に関するルールが至って複雑なことをお分かりいただけるのではないでしょうか。
割引を適用する時期
ピークシーズンにおける以下の最繁忙期の期間を除き、通年で割引が適用されます。
- GW:4月27日から5月6日までの間
- お盆:8月10日から8月19日までの間
- 年末年始:12月28日から翌年1月6日までの間
なお、JR東日本・北海道管内においては、上記の期間が毎年固定です。
割引を適用する距離
2026年3月に往復乗車券と連続乗車券の発売が終了となるため、会員割引きっぷの割引条件も影響を受けます。
2026年3月まで
乗車券については、片道・往復・連続で営業キロが通算201km以上となることが、割引適用のための条件です。
例えば、1組の連続乗車券を購入する上で、以下のような買い方ができます。
- 第1券片:営業キロ151km・普通列車乗車(特急券なし)
- 第2券片:営業キロ50km・特急列車乗車(特急券に会員割引適用)
2026年春以降
乗車券については、片道の営業キロが101km以上であることが、割引適用のための条件です。往復乗車券・連続乗車券の発売終了に伴い変更されるわけですが、これは実質的に条件の緩和となります。
特急券・グリーン券(料金券)については、距離にかかわらず割引が適用されます。通常は普通乗車券と料金券を同時に購入するため意識されませんが、距離に関係なく料金券が割引になることは案外知られていないのではないでしょうか。
割引を適用できる乗車券類の組み合わせ
「大人の休日俱楽部」会員割引きっぷについては、他の乗車券類との組み合わせが比較的柔軟です。ここでは、筆者が購入したことのある乗車券類の組み合わせをご紹介します。
「えきねっと」限定発売の「チケットレス特急券(トク割)」
ネット予約サービス「えきねっと」限定で購入できる発売席数限定の特急券が、「チケットレス特急券(トク割)」です。在来線特急列車の特急料金が所定の35%引きとなるため、旅費の節約には欠かせません。
うれしいことに、会員割引が適用された普通乗車券と、この特急券との併用が可能です。大人の休日俱楽部割引きっぷの割引率がミドルで5%、ジパングで30%であるため、トク割を購入した方が安くなります。
障害者手帳所持者用の割引普通乗車券
各種障害者手帳の所持者が購入できる割引普通乗車券と、「大人の休日俱楽部」会員割引が付いた特急券・グリーン券との併用が可能です。この際、料金券に関する営業キロには制限がなく、割引が適用されています。

これは、大宮駅から東武日光駅まで、JR東武連絡特急に乗車するためのきっぷです。普通乗車券には手帳による割引が適用され、特急券には会員割引が付いています。
従来からきっぷ代金の決済に利用している「大人の休日俱楽部」カードでこれらの乗車券類の代金を決済すると、乗車券と料金券にそれぞれ割引が付くため、最強のカードと言えるでしょう。

それでは、乗車変更や払いもどしにおける取扱方について、旅行開始前と旅行開始後に分けて見ていきましょう!
乗車変更の取扱方

「大人の休日俱楽部」割引きっぷは、厳密には「特別企画乗車券」というカテゴリーに属しています。そのため、無割引の乗車券のルールとは異なる独特のルールが規定されています。このルールは社内通達レベルのタリフ(商品ごとの個別規定)に収録されているため、ネット上には公開されていません(本来公開されるべきですが)。
乗車変更については、同タリフに条件が詳細に記載されています。ここでは、その要点をご説明します。
旅行開始前の乗車変更
指定券に記載された発車時刻になる前に、未使用の乗車券類がすべて揃っている状態での乗車変更を「旅行開始前の乗車変更」といいます(実務的には「乗車券類変更」といいます)。
会員割引きっぷについては旅行開始の前後を問わず、JRの運送約款である「旅客営業規則」に定められた一般的なルールを準用しません。独自のルールが適用されるため、制限がとても厳しくなっています。

できる変更
会員割引きっぷから会員割引きっぷへの変更が、「1回に限り」可能です。普通乗車券については、以下の通りさらなる制限が伴います。
- 片道乗車券→片道乗車券
- 往復乗車券→往復乗車券
- 連続乗車券→連続乗車券
例えば、往復乗車券から片道乗車券への変更はできません。無割引の普通乗車券ではこのような制限がなく、「大人の休日俱楽部」割引きっぷ特有の制限です。
料金券については、旅客営業規則上の一般ルールが準用されています。すべての券種から指定券への変更、および普通列車用グリーン券から普通列車用グリーン券への変更が可能です。
いずれの場合においても距離要件を満たさなければならないので、区間の変更を伴う乗車変更のハードルはなかなか高いです。乗車変更が現実的に可能なのは、以下のようなケースに限定されるでしょう。
- 同じ列車の席番の変更
- 区間の変更を伴わない日にちの変更
できない変更
上述した通り、普通乗車券の中での種類の変更は不可能です。
その上、無割引の乗車券類(ノーマル)と「大人の休日俱楽部」割引きっぷ相互間の乗車変更が一切できません。これが重要なポイントですが、意外なことにあまり知られていません。筆者も失念することがあり、往々にして失敗します。
- 割引きっぷ→ノーマル:NG
- ノーマル→割引きっぷ:NG
割引が適用されるための距離要件を満たせなくなった場合、無割引の乗車券類を購入することになります。いかなる場合も乗車変更ができず、一旦払いもどしてから購入し直す形です。
このような背景があり、区間の変更が伴う乗車変更が実質的に難しいと申し上げました。
旅行開始後の乗車変更
駅の改札口から構内に入場した場合、または指定券に記載された最初の列車の発車時刻に達した場合、「旅行開始後の乗車変更」が適用されます。その場合、所持するすべての乗車券類が「旅行開始後」として扱われます。
「大人の休日俱楽部」割引きっぷの場合、旅行開始後の乗車変更は一切不可能です。具体的には、以下のような制約が生じます。
- いずれかの乗車券の使用開始後は、未使用券片の乗車変更は一切不可
- 無割引の乗車券類では可能な「区間変更」の取り扱いが適用されない
- 乗り越しや経路変更となった場合、当該区間の運賃・料金を別途支払う
このように、会員割引きっぷに関しては旅行開始の前後を問わず、乗車変更の取り扱いが非常に厳しいです。割引きっぷには何らかの制約が伴いますが、乗車変更の面で顕著になった形です。
「安い物には訳がある」ということわざは、「大人の休日俱楽部」会員割引きっぷにも十分に通じます。
払いもどしの取扱方

このように、「大人の休日俱楽部」割引きっぷについては乗車変更が難しいです。その場合、購入した乗車券類について払いもどしを行うことになります。
払いもどしについては、「大人の休日俱楽部」の割引において特別ルールはありません。無割引の乗車券類に適用される旅客営業規則上の一般ルールが、全面的に準用されています。
旅行開始前(規則第271条)
旅行開始前であって、かつ未使用の乗車券類には、1枚につき以下の払戻手数料がかかります。
- 普通乗車券:220円
- 普通列車用グリーン券:220円
- 新幹線自由席・特定特急券:220円
- 座席未指定券(未指定特急券):340円
- 指定券【出発前々日まで】:340円
- 指定券【出発前日・当日】:特急・グリーン料金の30%分
旅行開始後
いずれかの乗車券類を1枚でも使い始めた場合、会員割引に関連するすべての乗車券類が旅行開始後の扱いとなります。使用を開始した券片の払いもどしは、以下の例外を除き一切不可能です。
乗車券類を使用開始後の一部券片の払いもどし(規則第271条)
旅行開始後であっても、有効期間内で未使用かつ出発時刻前の券片にあっては、1枚につき上記の払戻手数料を支払うことによって払いもどしを受けられます。
未使用区間の営業キロが101km以上残っている場合の普通乗車券の払いもどし(規則第274条)
使用を開始した券片について払いもどしが一切できないことの例外が、普通乗車券の未使用区間が101km以上残っている場合です。
この場合、既に使用した区間の運賃および払戻手数料220円と券面の金額との差額が払いもどしになります。「大人の休日俱楽部」割引きっぷについては、既に使用した区間の距離が割引要件を満たすか否かで、計算方法が異なります。
- 既乗車区間の営業キロが201km以上:割引運賃を適用
- 既乗車区間の営業キロが200km以下:無割引運賃を適用
まとめ

50歳以上の人が「大人の休日俱楽部」カードを持つと、普通乗車券や特急券・グリーン券を割引価格で購入できます。東日本をよく旅する人にとっては、欠かせません。
しかし、会員割引きっぷには、乗車変更に関して厳しい制限があります。旅行先や乗車する列車はそのままで、乗車する日にちや席番のみを変更する場合ならば、その制限をあまり心配する必要はありません。
ただし、乗車区間を大きく変更したい場合、要注意です。会員割引きっぷには距離要件があるため、その要件を満たさなくなると無割引のきっぷに変更する必要があります。
さらに、会員割引きっぷ固有のルール上、会員割引きっぷと無割引のきっぷを相互に乗車変更できません。そのため、払戻手数料を支払わなければならないリスクがあります。できれば、天気予報を見ながら旅程が確定するまで、きっぷの購入を保留したいです(予約が取りにくい列車の指定券は別ですが)。
「大人の休日俱楽部」割引きっぷはあくまでも「特別企画乗車券」のカテゴリーに含まれ、商品のタリフには特有の制限が記載されています(非公表)。そのため、発売条件や各種取り扱いに制限が伴うことを認識する必要があります。いわば、「安い物には訳がある」ということです。
このような制限があることをあらかじめ知っておけば、安心して会員割引きっぷを活用できるのではないでしょうか。
この記事が、鉄道会社とユーザー間の情報格差を少しでも埋めるための助けとなれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● 「大人の休日俱楽部カード」ご利用ガイド(ビューカード)2021.7
● 「大人の休日俱楽部」公式ウェブサイト 割引きっぷの概要(JR東日本)2025.4閲覧
● 「きっぷあれこれ」きっぷの変更(JR東日本)2025.4閲覧
● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則
当記事の改訂履歴
2025年4月20日:当サイト初稿(リニューアル)
2022年6月10日:前サイト初稿(原文作成)
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