誕生月のみ購入できる、JR四国の「バースデイきっぷ」。JR四国全線が乗り放題のフリーきっぷは何種類か発売されていますが、その中でも値段が破格です。
バースデイきっぷには、普通車自由席用とグリーン車用の2種類が設定されています。いずれも、「お誕生日おめでとう♪」というメッセージが感じられる価格設定です。特に、グリーン車用のきっぷでは、普通車指定席やグリーン車の座席指定を受けられます。このようなきっぷは、なかなか貴重です。
筆者もこのきっぷを利用し、四国内の乗り鉄を楽しみました。初めて利用したのが2016年6月で、それから7年後の2023年6月にも再び利用しました。
グリーン車用きっぷの特長である、観光列車「ものがたり」シリーズに乗り放題という点をフルに活かし、「伊予灘ものがたり」号にじっくり乗車できました。
グリーン車が連結されている列車は限られていますが、1回でも乗車すれば簡単に差額分の元を取れます。観光列車にも回数制限なく乗車可能なので、グリーン車用を購入するのがおススメです!
この記事では、最初にバースデイきっぷの特長や強みについてお話ししてから、筆者がグリーン車用のきっぷを使って四国縦断した体験をご紹介します。
JR四国「バースデイきっぷ」の種類と特長
JR四国では何種類かフリーきっぷが発売されていますが、その中でもバースデイきっぷは誕生月にあたる人だけが購入できる限定発売のきっぷです。限定発売だけあって、他のきっぷよりも発売条件が良く、同じ効力のきっぷをより格安に買うことができます。
バースデイきっぷはもともとグリーン車用のみ発売されていましたが、現在は普通車自由席用とグリーン車用の2種類が発売されています。
普通車自由席用
JR四国管内全線および土佐くろしお鉄道全線に3日間乗り放題で、大人12,000円/小児6,000円です。
普通車自由席用のきっぷで乗車できるのは特急・快速・普通列車の普通車自由席だけで、座席指定を受けることはできません。この点がグリーン車用との大きな差です。
座席指定が必要なグリーン車や観光列車に乗車する予定がなく、定期列車の自由席のみ乗車する場合に適したきっぷです。
普通車自由席に乗り放題というきっぷの効力が同じ他のフリーきっぷよりも、価格設定が抑えられており、まさに「お誕生日おめでとう♪」プライスと言えます。
グリーン車用
フリー乗車区間や有効期間は普通車自由席用と同じで、値段が大人15,000円です(小児設定なし)。
普通車自由席用との大きな違いは、グリーン車や普通車指定席に乗車するための座席指定を受けられることです。座席指定が必要な観光列車にも回数制限なく乗車できるのが、グリーン車用の大きな強みです。
グリーン車や普通車指定席に乗車できるフリーきっぷは、バースデイきっぷと「四国グリーン紀行」に限られています。グリーン車用の設定自体が貴重であり、その上値段も破格です。まさに、バースデイプレゼント的なきっぷと言えるでしょう。
JR四国管内の全列車に乗車できるオールマイティーなきっぷなので、座席指定を受ける場合グリーン車用をおススメします。
バースデイきっぷの詳細や買い方、他のフリーきっぷとの使い分け方、きっぷのコスパといった技術的な内容については、以下の記事(↓)をぜひご一読ください。
バースデイきっぷ(グリーン車用)で乗車できる観光列車
グリーン車用のきっぷでは、すべての観光列車に乗車できることが強みと申し上げました。一体、どのような列車に乗車できるのでしょうか。
ここでは、JR四国管内の観光列車をリストアップしたいと思います。
「ものがたり」シリーズの列車
JR四国管内の観光列車の中で最高峰に位置づけられるのが、「ものがたり」シリーズの列車です。
この列車は全車グリーン車の指定席で、上質な車内で食事を満喫できる高級さがウリです。食事は別料金で強制ではないため、レストラン列車とは言い切れません。しかし、アテンダントの接遇は、レストラン列車並みの高クオリティーです。きっぷで乗車できる観光列車の中では、日本でもトップクラスに違いありません。
「ものがたり」シリーズの列車はいずれも特急列車の扱いで、以下の3つの列車があります。
伊予灘ものがたり
松山駅ー伊予大洲駅・八幡浜駅
松山駅(愛媛県松山市)をベースとして、通年週末を中心に運行されます。一日当たり2往復4本の運行で、うち2本が伊予大洲駅(愛媛県大洲市)ゆき、残りの2本が八幡浜駅(愛媛県八幡浜市)ゆきです。沿線の人々からのホスピタリティーが感じられる列車です。
四国まんなか千年ものがたり
多度津駅ー大歩危駅
通年週末を中心に運行され、多度津駅(香川県多度津町)から琴平駅(香川県琴平町)を経由し、大歩危駅(徳島県三好市)まで一日当たり1往復の運行です。
志国土佐 時代の夜明けのものがたり
高知駅ー窪川駅
高知駅ー奈半利駅
窪川駅(高知県四万十町)ゆきは、通年週末を中心に、一日1往復の運行です。土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線を走る奈半利駅(高知県奈半利町)ゆきは、期間限定の金曜日に一日1往復運行されます。
トロッコ列車
JR四国管内は、トロッコ列車の宝庫です。3系統の列車が臨時列車として走っています。列車によってはグリーン車の扱い、あるいは普通車指定席の扱いです。
JR四国管内のトロッコ列車は、次の通りです。
瀬戸大橋アンパンマントロッコ
岡山駅ー児島駅ー高松駅・琴平駅
岡山駅(岡山市北区)から児島駅(岡山県倉敷市)を経て、高松駅および琴平駅まで運行されている臨時列車です。快速列車で、全車グリーン車の扱いです。通年週末や春休み、夏休みに運行されます。一日2往復4本の運行で、うち2本が琴平駅、残りの2本が高松駅発着です。
藍よしのがわトロッコ
徳島駅ー阿波池田駅
徳島駅(徳島県徳島市)から徳島線を走り、阿波池田駅(徳島県三好市)までの区間を結ぶ臨時列車です。快速列車で、普通車指定席の扱いです。毎年7月・1月・2月以外の週末を中心に、1日当たり1往復の運行です。
しまんトロッコ
宇和島駅ー窪川駅
宇和島駅(愛媛県宇和島市)から予土線を走り、窪川駅までの区間を結ぶ臨時列車です。普通列車で、普通車指定席の扱いです。毎年6月・12月ー2月以外の週末を中心に、一日1往復の運行です。
アンパンマン列車【定期列車】
アンパンマン列車とは、特急列車の車体にアンパンマンのラッピングが施された列車を指します。車内にもアンパンマンの装飾があって、カラフルです。定期列車として走るので、厳密には観光列車ではありません。しかし、JR四国では観光列車の一つとして位置づけられています。
アンパンマンのラッピングが施された特急列車は、次の通りです。
- しおかぜ号
- 宇和海号
- 南風号
- ゆうゆうアンパンマンカー
JR四国管内の観光列車一覧
画像引用元:JR四国販売パンフレット
これらの観光列車の一覧です。この地図を見れば、観光列車にどんな列車があって、各列車がどの辺を運行しているかお分かりになるでしょう。
お待たせしました。これからは、筆者の乗車体験です!
バースデイきっぷを使って四国縦断!【1日目】
筆者がバースデイきっぷを使用して旅行を開始したのは、2023年6月のある金曜日でした。徳島駅から徳島線で阿波池田駅を経て、土佐くろしお鉄道中村駅へ。そして、予土線で宇和島駅まで四国を縦断しました。
実はこの日「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」の乗車を検討したのですが、1か月前のタイミングで指定券が瞬殺だったようで、JR四国販売センターで手配してもらった時点では売り切れでした。その後キャンセルも出なかったため、縁なく他の定期列車での四国縦断となりました。
前夜に徳島駅に入り、駅チカのホテルに投宿し、翌朝朝一から縦断を開始しました。また、前日には列車の座席指定をまとめて受けました。
徳島線 徳島駅ー阿波池田駅
徳島駅から徳島線の列車に乗車し、吉野川に沿って阿波池田駅まで向かいました。
特急剣山1号:
徳島駅 6時46分発 → 阿波池田駅 8時10分着
投宿していたホテルを朝6時過ぎに出て、徳島駅へ。
徳島駅で、バースデイきっぷを使用開始しました。駅の改札口できっぷを提示し、入鋏。ここでバースデイきっぷを見せたわけですが、駅員さんが「お誕生日おめでとうございます!」と言ってくださいました。JR四国のスタッフのホスピタリティー、なかなかすごいなと思った瞬間でした。
車両は、国鉄時代からのキハ185系。
行先表示幕もLEDではなく、れっきとした幕です。
指定席は、1号車の16席のみです。四国では特急列車には予約なしで自由席に飛び乗るのが一般的で、指定席に座っていたのは筆者を含め、遠方からの観光客ばかりでした。
土讃線 阿波池田駅ー高知駅
阿波池田駅で土讃線の列車に乗り換え、先に向かいました。バースデイきっぷのグリーン車用を使用し、唯一グリーン車に乗車した区間です。
特急南風1号:
阿波池田駅 8時29分発 → 高知駅 9時39分着
阿波池田駅での乗り換え時間は、20分弱。特急剣山号から特急南風号へ乗り継ぐ乗客が意外に多く、驚きました。
特急南風号の車両が入線。最新鋭の2800系車両です。
グリーン車の車内は3列シートで、シートそのものは快適でしたが。
ここで、グリーン車の難点に遭遇しました。深く座席を倒すことができるため、圧迫感を覚えるのです。運悪く前席の客がMAXまで倒していたので、車掌さんの許可を得て別の席に避難しました。
グリーン車に乗車する時は、前列に席がない最前列に座るに限ります。
高知駅への途中、土讃線内で景色の良い大歩危、小歩危を通過。
土讃線 高知駅ー中村駅
高知駅で列車を乗り換え、一路土佐くろしお鉄道線内に入りました。
特急あしずり1号:
高知駅 9時53分発 → 中村駅 11時32分着
高知駅を境に客層がガラッと変わり、地元の用務客が多くなりました。
車両は、振り子型の2000系特急気動車。きついカーブが多い四国内の路線も減速することなく、車体を左右に振りながらグイグイと走っていきます。
土讃線内では意外なことに海岸線をほとんど走らないのですが、須崎駅付近と土佐白浜駅付近では一瞬海岸線に出ます。迫力ある太平洋の眺めです。
土佐くろしお鉄道線内に入り、中心駅の中村駅(高知県四万十市)へ到着。
土佐くろしお鉄道線 中村駅ー窪川駅
中村駅では鉄印をいただき、その足で窪川駅まで戻りました。
普通512D:
中村駅 12時03分発 → 窪川駅 13時05分着
ここからは、普通列車の旅です。窪川駅ゆきの普通列車は、地元密着の純然たるローカル列車です。
特急列車にはない、ゆるっとした空気があります。そんな車内で1時間過ごし、終点の窪川駅に到着。
予土線 窪川駅→宇和島駅
窪川駅では16分間の乗り継ぎで、この日のハイライトの予土線に入りました。きっぷ鉄の聖地と言われる近永駅に、この日ようやくたどり着きました。
普通8819D:
窪川駅 13時21分発 → 宇和島駅
窪川駅の予土線ホームには、すでに「しまんトロッコ」の車両が止まっていました。とはいえ、6月にはトロッコ車両は連結されていなく、全車ロングシートの車両だけでした。
四国内でも最も過疎な区間で、この列車に乗車していたのは、筆者を含め観光客ばかり4人。
定刻に列車が発車し、若井駅を過ぎて川奥信号所で予土線へ。
土佐大正駅(高知県四万十町)までの沿線風景がすごいのです。家屋もほとんどない手つかずの四万十川沿いを、列車は高速で飛ばしていきます。
途中の江川崎駅(高知県四万十市)で、20分ほど停車。そこで、地元の人が数名乗車してきたものの、まだまだ閑散とした車内。
途中の近永駅(愛媛県鬼北町)で下車。
JR四国管内ではここだけになった手売りの常備券を購入。
きっぷを買ってから後続の列車に乗車し、目的地の宇和島駅に到着。
バースデイきっぷで「伊予灘ものがたり」号三昧!【2・3日目】
1日目に近永駅でのミッション「きっぷ鉄」がつつがなく完了したので、2日目以降は自由の身となりました。2日目と3日目は、宇和島駅と今回の旅行を終えた松山駅の区間を行ったり来たりしました。
2日目の土曜日と3日目の日曜日は、観光列車「伊予灘ものがたり」号の運行日に当たりました。伊予灘ものがたり号には、指定席が取れる分だけ乗車しようと思い、JR四国販売センターに総当たりでの手配を依頼していましたが、思った以上に苦戦。取れたのが土曜日と日曜日の双海編、土曜日の道後編の3回分だけでした。松山駅を発車する大洲編と八幡浜編は特に人気があり、1か月前の発売開始時でも歯が立ちませんでした。
予讃線 宇和島駅ー伊予大洲駅
投宿していたホテルを早めに出て、宇和島駅から「伊予灘ものがたり」双海編が出発する伊予大洲駅へ移動。
特急宇和海8号:
宇和島駅 8時40分発 → 伊予大洲駅 9時29分着
駅のホームには早めに入ったものの、早い時間から多くの乗客がいました。
土曜日の午前中、乗客が多く3両編成の列車がかなり混んでいました。この列車はアンパンマン列車ではありませんでした。
伊予大洲駅には早めに着いたので、駅から徒歩数分の所にある肱川(ひじかわ)の河原で大洲城を眺めました。列車からも眺められますが、歩いていったらより近くに見られました。
予讃線 伊予大洲駅ー松山駅
ここから、いよいよ伊予灘ものがたり三昧の時間となりました。
2日目の土曜日に乗車したのは、午前中に伊予大洲駅を発車する双海編と夕方に八幡浜駅を出発する道後編の2本でした。
伊予灘ものがたり号に乗車し、食事を愉しんだ体験は中身がとても濃いので、別の記事にまとめたいと思います。
★ 鋭意執筆中 ★
まとめ
誕生月だけに購入できる、JR四国全線が乗り放題の「バースデイきっぷ」。筆者も今回利用しましたが、JR四国のスタッフのホスピタリティーを直に感じ取れました。これは他のJR各社ではなかなか得られない体験で、良い意味でJR四国が旧来のJRらしくないと感じました。
普通車自由席用とグリーン車用の2種類がありますが、二者間の価格差が少ない割に乗車できる列車に差が大きすぎるので、グリーン車用のコスパが抜きん出ています。是非、オールマイティーなグリーン車用のほうを選んでいただきたいです。
ただし、グリーン車が連結されている列車が少なく、グリーン車の座席自体供給が少ないので、時期によっては席を取りにくいことを念頭に置くとよいでしょう。しかし、観光列車は回数制限なく乗り放題なので、席が取れる限り乗り倒せます。
観光列車の中では、高級路線の「ものがたり」シリーズの列車が通年運行で、是非とも予定に含めていただきたいです。また、トロッコ列車にも乗車できると満足感が高まるかと思います。
誕生日で購入資格を振り分けることで、ある時期に需要が集中して混みあうこともありません。その点で、バースデイきっぷの商品設計は優れています。乗車できる列車のオールマイティーさがグリーン車用の醍醐味なので、この商品設定を永く続けていただきたいです。
参考資料
● 観光列車(JR四国) 2025.02閲覧
当記事の改訂履歴
2025年02月04日:当サイト初稿(リニューアル)
2023年7月10日:前サイト第2稿
2016年6月24日:前サイト初稿(原文作成)
コメント