日本人であれば、元旦の初日の出をいち早く拝みたいもの。離島や高所を除いた本土で最も早く初日の出を拝めるのが、千葉県銚子市に位置する犬吠埼です。
日が昇り始める6時46分に間に合うように、初日の出列車「犬吠初日の出」号が、元日未明に東京から銚子駅に向けて運行されています。中央本線高尾駅および湘南新宿ライン大宮駅から新宿駅を経由し、朝5時前に銚子駅に到着しますが、毎年人気です。
銚子駅から犬吠埼最寄りの犬吠駅までの区間は、銚子電気鉄道線に乗車します。犬吠初日の出号から銚子駅で乗り換える時、輸送力の限界で混雑するのが(解決困難な)課題です。筆者も、銚子駅での乗り換えには苦戦しました。
人気列車である犬吠初日の出号の指定券をどのように取るのか、銚子駅でいかに要領よく乗り換えるのか、心配ではないでしょうか。
毎年元旦に運行されますが、近年人気があり早々に満席になります。12月1日10時に駅窓口や「えきねっと」で席を押さえたいです。できる限り、進行方向前方の9号車寄りを狙いたいです。
この記事では、臨時特急列車「犬吠初日の出」号や銚子電気鉄道線の列車に乗車して犬吠埼に向かい、初日の出を拝むための戦略についてご説明します。当記事の内容が、元旦の初日の出を清々しく拝むためのヒントとなれば幸いです。
クルマでアクセス困難な犬吠埼に列車でスイスイ!
太平洋に突き出ている犬吠埼は、千葉県銚子市の最東端に位置します。公共交通機関である銚子電気鉄道線で容易にアクセスできますが、クルマで向かう方が多いのではないでしょうか。
交通規制が厳しい犬吠埼周辺の道路
初日の出を拝もうとする多くの人が殺到する犬吠埼周辺の道路は、大みそかの午後から閉鎖されます。そのため、大みそかの早い時間に犬吠埼入りする必要があり、とても時間がかかります。その上、駐車場も限られているため、クルマで行くのは困難です。
道路が閉鎖されるため、東京駅から犬吠埼へ直結する高速バスも、一部区間で運行が休止されます。そのため、道路からのアクセスはなかなか厳しいものがあります。
列車でいかに要領よく犬吠埼へアクセスするか
その点で、列車を利用すると気が楽です。幸いなことに、元日未明には東京から銚子に向かう初日の出列車が毎年設定されます。そして、銚子電気鉄道線の列車がその列車に接続します。
いいこと尽くしの列車ですが、乗車できる人員が限られています。人気列車であるため、いかにして指定券を取るか、銚子駅でいかに要領よく乗り換えるかといった戦略がとても重要です。
この列車に確実に乗車するには、12月1日午前10時00分の発売開始に合わせて指定券を購入することに限ります。また、銚子電気鉄道線の列車に要領よく乗り換えるためには、進行方向前方の9号車寄りの座席を押さえたいです。
これが一筋縄ではいかないのですが、これから詳しくご説明したいと思います。
JR東日本首都圏地区における初日の出列車の概要
JR東日本管内では、初日の出スポットである富士山、犬吠埼、外房千倉海岸に向けて、毎年元旦未明に臨時特急列車が運行されています。
2020年前後にはCOVID-19の影響で運行しなかった年があったものの、2024年以降は完全に運行が復活しました。
- 犬吠初日の出号:銚子駅から犬吠埼にアクセス
- 外房初日の出号:千倉駅から外房海岸にアクセス
- 富士初日の出(富士回遊)号:河口湖駅から河口湖にアクセス
犬吠埼や外房海岸では太平洋から昇る初日の出を、河口湖周辺では富士山から昇る初日の出を拝めます。いずれも、人気ある初日の出スポットです。
それらの列車のうち、当記事で扱うのが、犬吠埼に向かう臨時特急「犬吠初日の出」号です。
犬吠初日の出号の運行経路・ダイヤ・料金
臨時特急列車「犬吠初日の出」号は、毎年元日未明に銚子駅に向けて運行されます。運行本数は、年によって変わります。
運行経路・車両
この列車が出発するのは、中央本線高尾駅(東京都八王子市)および湘南新宿ライン大宮駅(さいたま市大宮区)です。
高尾駅から出発する列車(1号)は、途中八王子駅および立川駅に停車した後、新宿駅に着きます。大宮駅から出発する列車(3号)は、途中浦和駅に停車してから新宿駅に着きます。新宿駅で列車番号が変わり、総武本線内の主要駅に停車して銚子駅に至ります。
この列車の運行に充当される車両は、現在はE257系です。過去には、185系や255系で運行されたこともあります。9両編成の列車には、普通車指定席の他、グリーン車が連結されています。
2025年運行実績
列車号数 | 運行区間 | 車両・両数 | 定員 |
犬吠初日の出1号 | 高尾駅→銚子駅 | E257系9両 | 定員550名 |
犬吠初日の出3号 | 大宮駅→銚子駅 | E257系9両 | 定員550名 |
2024年運行実績
列車号数 | 運行区間 | 車両・両数 | 定員 |
犬吠初日の出1号 | 高尾駅→銚子駅 | E257系5両 | 定員306名 |
犬吠初日の出3号 | 大宮駅→銚子駅 | 185系6両 | 定員376名 |
犬吠初日の出5号 | 大宮駅→銚子駅 | 255系9両 | 定員544名 |
2024年に運行された3号には185系電車が充当されたため、人気だったようです。筆者も乗車したかったのですが、指定券を押さえることができませんでした。
このように、運行される列車は毎年変わります。列車の運行ダイヤについては、前年10月20日頃に情報解禁される「冬の臨時列車の運転について」を参照したいです。臨時列車の情報源について、以下の記事(↓)で詳しくご説明しています。
犬吠初日の出号のダイヤ
臨時特急「犬吠初日の出」号が走るのは未明の銚子駅ゆきだけで、銚子駅を日中出発するかえりの列車は設定されていません。
高尾駅から発車する1号の所要時間は全区間で2時間49分、大宮駅から発車する3号については2時間59分です。夜行列車とはいえ運行時間が短く、少し仮眠できる程度です。
2024年、2025年とも、以下のダイヤで運行されました。今後も、ほぼ同時刻のダイヤが組まれると推測します。
号数 | 1号 | 3号 | 5号 |
列車番号 | 9202M | 9342M | — |
高尾駅発 | 1:30 | — | — |
八王子駅 | 1:36 | — | — |
立川駅 | 1:45 | — | — |
大宮駅発 | || | 1:46 | — |
浦和駅 | || | 1:54 | — |
新宿駅着 | 2:11 | 2:19 | — |
列車番号 | 9401M | 9403M | |
新宿駅発 | 2:12 | 2:20 | 2:45 |
錦糸町駅 | 2:31 | 2:39 | |
船橋駅 | 2:43 | 2:52 | |
千葉駅 | 2:54 | 3:06 | |
佐倉駅 | 3:06 | 3:23 | |
成田駅 | 3:20 | 3:37 | |
銚子駅着 | 4:19 | 4:45 | 5:17 |
銚子駅まで乗車して犬吠埼へ向かう他、成田駅まで乗車して成田山新勝寺に参拝することも可能です。
銚子電気鉄道線の接続列車のダイヤ
犬吠初日の出号の到着に合わせて、銚子電気鉄道線の列車が接続しています。運行時刻は下表の通りです。
列車番号 | 203 | 205 | 207 | 209 |
銚子駅発 | 4:39 | 5:03 | 5:29 | 5:56 |
犬吠駅着 | 4:59 | 5:23 | 5:49 | 6:16 |
ご存じだと思いますが、銚子電気鉄道線の列車は2両編成で、乗車できる人数は200名程度です。JR線を走る特急列車の定員がそれをはるかに上回るため、銚子駅での乗り換えの際に大混雑となり、積み残しが多数出ます。
銚子駅の構内図を見ると明らかなように、銚子電気鉄道線に乗り換えるには、階段を上ることなく進行方向の前方に向かいます。
筆者が大宮駅から3号に乗車し、銚子駅に到着した際、トイレに立ち寄ったため後塵を拝しました。ようやく乗車できたのが5時56分発の列車で、初日の出に間に合わないのではないかとヒヤヒヤ。
このため、銚子駅で要領よく乗り換えられるよう、事前に戦略を練る必要があります。
犬吠初日の出号の運賃・料金
この列車は特急列車なので、運賃の他に特急料金が必要です。また、臨時列車のためネット限定割引料金などの設定がなく、所定の運賃・料金がかかります。
この列車が発車する高尾駅、大宮駅、新宿駅ともに東京近郊区間に属するため、運賃については銚子駅までの最短経路で計算します。
特急料金については、実際に運行される経路の営業キロを基にします。運賃と特急料金にギャップが生じる場合がありますが、この列車に関してはほとんどギャップはありません。
発駅名 | 営業キロ | 運賃 | B特急料金 | 合計 |
高尾駅 | 170.5 | 3,080 | 2,690 | 5,770 |
大宮駅 | 155.1 | 2,640 | 2,690 | 5,330 |
新宿駅(山手線内) | 127.7 | 2,310 | 2,290 | 4,600 |
元日が最繁忙期に当たるため、シーズンの面からも特急料金が高額です。
この表から分かるように、運賃と特急料金を合計すると、大人で片道5千円前後かかります。高速バスに比べ、相当高く感じるのではないでしょうか。
犬吠初日の出号のきっぷの取り方
臨時特急「犬吠初日の出」号は、全車指定席です。自由席はないため、乗車する前に指定券(特急券)を購入しなければなりません。
犬吠初日の出号の指定券の購入方法
犬吠埼へのアクセスをいかに要領よく快適にするか、このステップで決まります。心して指定券の購入に臨みたいです。
グリーン車は瞬殺・普通車はまあまあ
グリーン車が連結されている場合、グリーン車の座席が取れると快適です。しかし、席数が少ないため、発売開始時に満席になるのが常です。
普通車は10時ちょうどで瞬殺になることはありませんが、早い時期に満席になります。なるべく12月1日中には指定券を購入しておきたいです。
発売開始時期
1月1日乗車分の指定席の発売時刻は、12月1日午前10時00分です。ネット予約サービス「えきねっと」を利用すると、11月24日14時00分から事前受付へのエントリーが可能です。
発売箇所
駅のみどりの窓口もしくは指定席券売機で購入可能です。もちろん、「えきねっと」でも購入できます。
指定券購入のツボ
前述した通り、銚子電気鉄道のホームに最も近い9号車寄りの座席を押さえることが、勝利への近道です(5両編成では5号車寄り)。その点では、グリーン車よりも普通車の方が有利でしょう。
「えきねっと」の事前受付を利用すると席が取りやすいのですが、号車指定できないのが難点です。号車指定にこだわるのであれば、駅に行く必要があります。
「えきねっと」の事前受付にエントリーした場合、12月1日の10時以降に結果が回答されます。しかし、回答が届くのがとても遅いのです。年末年始の繁忙期ということもあって、筆者が回答を受け取ったのは正午過ぎになりました。心配であれば、10時に自分で席を取ると安心ではないでしょうか。
いわゆる「10時打ち」にかけるのも手です。しかし、JR東日本管内で10時打ちの対応をしてもらえる駅は限られるため、両手を挙げておススメできないのが残念です。詳しくは、以下の記事をご一読ください。
乗車券について
銚子駅は交通系ICカードの利用エリアに含まれるため、紙の普通乗車券を買わなくてもIC乗車できます。その場合、銚子駅で乗り換える際に簡易改札機へタッチするのを忘れないようにしたいです。
普通乗車券を買う場合、使用開始日を1月1日とする点に注意しましょう。
犬吠初日の出号は特急列車のため、青春18きっぷを乗車券として使用できません。最繁忙期に発売されているフリーきっぷはほとんどないため、所定の運賃がかかると考えた方がよいでしょう。
銚子電気鉄道線の乗車券購入戦略
銚子駅で銚子電気鉄道線に乗り換える際にきっぷを購入するわけですが、そのための長蛇の列ができます。
その列をかわす方法は、デジタルきっぷ「Beica(ベイカ)」を購入することです。銚子駅に到着するまでにこのきっぷを購入すると、先述したきっぷの購入列に並ぶことなく、優先的に乗り換えができます。
値段も大人600円で、紙の一日券(弧廻手形)よりも安価です。
筆者が犬吠初日の出号に乗車中、JR社員がこのきっぷの購入をしきりにススメていましたが、ここは従った方がよいかなと思いました。
お待たせしました!実際に「犬吠初日の出」3号に乗車した際の様子をお伝えします!
犬吠初日の出号に乗車して初日の出を拝む~筆者の乗車体験~
筆者が初めてこの列車に大宮駅から乗車したのは、2016年でした。2025年元日、9年ぶりに再度乗車する機会が得られました。
犬吠初日の出3号(9342M/9403M):
大宮駅発 1時46分 → 銚子駅着 4時45分
2016年に乗車した時は5両編成でしたが、今回は9両編成でした。そのため、ホームに集まる人の数がやたらに多かったです。
大宮駅で列車の入線を待つ
筆者が大宮駅の改札口に着いたのは、午前1時15分。列車が発車する30分前でした。
いつもは大勢の人で埋め尽くされるコンコースも、この時はまばら。
改札口からエキュートの方を見ると、静けさが。他のホームに行かないよう、警備員が監視していました。
普段は人でごった返しているコンコースも、がらんとしていました。
早速、列車が発車する7番線ホームへ。どの方面への列車も発着できる、オールマイティーなホームです。
発車標には、列車名がはっきり表示されていました。
列車が入線するのが、定刻のわずか6分前の1時40分とのこと。待っている間に、列車に乗車する多くの人でホームが埋め尽くされました。列車の先頭位置には、撮り鉄のガチ勢が。
1時40分に列車が入線。乗客のほぼ全員が乗り鉄かと思うくらい多くの人が列車へカメラを向けていました。前に乗り出す輩があまりにも多く、ヤバい状況。危ないぞ。
発車まで5分しかない上、乗車位置が示されてなかったため、多くの乗客がホームを右往左往。乗客にホーム上をあちこち歩かせるのは、あまりよろしくありません。
車両の行先標には、シンプルに「特急」と表示されていました。
2016年元日に運行された犬吠初日の出3号
2016年元日にも、犬吠初日の出号が運行されました。大宮駅から乗車しました。
これは、2016年元日に列車が入線した時の様子です。同時刻に同じ場所から撮りましたが、乗り鉄がフィーバーする前だったため比較的穏やかな雰囲気でした。
犬吠初日の出号車内で仮眠
筆者も急いで車内へ。9両編成のE257系ということで、先代の特急「あずさ」号を思い出しました。
大宮駅を定刻に発車した時点での車内の様子。満席というものの、乗車しているのはまだ半分ほど。乗客の層は鉄オタばかりではなく、一般の乗客も多く見られました。男性がやはり多いものの、男女のカップルも多かったです。
湘南新宿ラインを経由し、新宿駅へ。新宿駅に着く直前、湘南新宿ラインから中央線特急ホームに転線。団体臨時列車でない限り通らないような線路を渡りました。この列車ならではのレアな体験です。
新宿駅の9番線ホームに到着。ここで列車番号が変わり、乗務員も交代しました。ホーム上はちょっとしたお祭りで、中高生らしき少年たちが右往左往していました。
新宿駅を発車してからは、房総特急の趣。9番線ホームから中央線快速上りの線路に転線するのも、レアな体験。御茶ノ水駅の手前で中央総武緩行線の線路に転線し、錦糸町駅の手前で総武快速線へ転線。大宮駅から錦糸町駅に至るまで、ポイントを渡り続く様子が、あみだくじを引くような感覚でした。
船橋駅を過ぎたところで、車内が消灯。成田駅で乗り降りがあり、車内が少しだけ入れ替わり。4時ちょうどに佐原駅に運転停車し、成田線を銚子駅へ。
定刻の4時45分、銚子駅に到着。
銚子駅での狂騒曲~銚子電気鉄道線への乗り換えで大混雑~
銚子駅では2番線ホームに到着。階段を上ることなく、銚子電気鉄道線に乗り換えられます。銚子駅まで乗車券を買ってあるか、交通系ICカードのチャージが不要ならば、そのまま乗り換え可能です。
筆者は改札口へ向けて一旦離脱してしまったため、再び2番線ホームに戻ったら長蛇の列ができていました。先述した「Beica」を購入していれば、優先入場できる列に進めましたが、筆者は買わなかったため一般の列へ。
犬吠初日の出3号に連絡する5時03分発の列車は当然のこと逃し、次発の5時29分発の列車にチャレンジ。これが乗れそうで乗れず、結局乗れたのは5時56分発の列車。9両編成の列車2本に乗車していた約1,100人の乗客を、2両編成の普通列車でさばこうとしても、容易なことではありません。
この時、空が白んできました。待っていた人全員がこの列車に乗車でき、全員が初日の出の時刻に何とか間に合った状況でした。
君ヶ浜の波打ち際で初日の出を拝む
犬吠駅に着いたのが、日の出時刻30分前の6時16分。絶望的になっていたのですが、ぎりぎりで君ヶ浜の波打ち際に立てました。
今回は空がクリアで、6時50分頃には太陽が見えてきました。
まとめ
犬吠埼での初日の出に間に合うように運行されるのが、臨時特急列車「犬吠初日の出」号です。中央本線高尾駅および湘南新宿ライン大宮駅から新宿駅を経由し、終点の銚子駅まで向かいます。
この列車はとても人気で、乗車日までには満席になります。そのため、指定券が発売される12月1日には購入を済ませたいです。普通車であれば10時打ちしないと買えないほどではありませんが、なるべく早くきっぷを購入することをおススメします。
指定券を買う時、できれば列車の進行方向前方に位置する9号車の座席を押さえたいです(5両編成の場合は5号車)。しかし、「えきねっと」の事前受付では号車指定ができないため、発売開始に合わせて自分で取る必要があります。
犬吠初日の出号の指定券を取ることも大事ですが、銚子電気鉄道線への乗り換えもうまくこなしたいもの。銚子駅に到着するまでに、銚子電気鉄道線のデジタルきっぷ「Beica」をスマートフォン上で購入しておくと、優先して乗り換えできます。
事前にこれらの戦略を実践することで、犬吠埼から昇る初日の出を清々しく拝めることでしょう。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● JR東日本ニュースリリース「冬の臨時列車の運転について」2024.10.18付
当記事の改訂履歴
2025年01月06日:当サイト初稿(リニューアル)
2016年01月01日:前サイト初稿
コメント