「風っこストーブ」と呼ばれるJR東日本のストーブ列車が、東北地区のローカル線を走っています。
気動車キハ48形のトロッコ列車「びゅうコースター風っこ」が、冬場には臨時列車「風っこストーブ」として運行されます。夏場に走る「風っこ」も人気がありますが、冬場に走る「風っこストーブ」の人気はさらに高いです。
車内にはだるまストーブが1台あって、石炭をくべると車内が暖まります。また、だるまストーブの上に乗っている金網には、食べ物を置けます。温まった食べ物を肴に一杯やるのは、ストーブ列車ならではの風情と言えるでしょう。
筆者も、磐越西線の郡山駅から喜多方駅までの区間を走る「風っこストーブ喜多方」号に乗車し、冬場ならではの雰囲気を満喫しました。
列車に乗車する前に、だるまストーブで温める食材を用意したいです。東北らしい雪国の汽車旅を、存分に体験できます!
この記事では、冬場に運行されるストーブ列車「風っこストーブ」の概要やきっぷの準備方法についてお話しします。そして、「風っこストーブ喜多方」号に往復乗車した際の様子を共有できればと思います。
「風っこストーブ」の概要・走行区間
最初に、臨時列車「風っこストーブ」の概要と、走行区間についてご説明します。
列車の概要
「風っこストーブ」の運行に供される「びゅうコースター風っこ」は、気動車のキハ48形を改造した2両編成の車両です。2000年から稼働しており、すでに20年以上が経っています。車両を観察すると、経年劣化が進んでいるように見受けられます。
しかしながら、無機質な新造車両が多い中で、使い込まれた木製のボックスシートには独特の温かさがあります。味のある一昔前の列車に乗ると、懐かしい風情を満喫できるに違いありません。
「びゅうコースター風っこ」は、宮城県北部の美里町にある小牛田運輸区をベースに、各地に出張して臨時列車として稼働しています。
春から秋にかけてはオープンエアーのトロッコ列車として走りますが、風を浴びながら景色を眺めていると、気分は爽快です。一方で、冬場には車内を窓ガラスで閉め切りますが、ストーブから暖を取りつつ眺める雪景色が素敵です。
「風っこストーブ」に設置されただるまストーブは、自動制御されるのではなく、人が石炭をくべています。ストーブの熱を利用して加熱した食べ物から出る薫香が、車内に広がるのです。
列車の走行線区
冬場に走る「風っこストーブ」は、単発の臨時列車として走ることは少ないです。どちらかと言えば、毎年同じ時期に同じ線区を走る傾向があります。
「びゅうコースター風っこ」が冬場に走る際の列車名は、目的地や線区名を織り込み、「風っこストーブ●●」号と名付けられます。
2022-23シーズン以降、定期的に運行されている「風っこストーブ」号の運行日および線区について、この記事の最後に記載しました。
冬場に「風っこストーブ」が走る線区は、次の通りです。
- 陸羽東線(仙台駅ー鳴子温泉駅)
- 石巻線(仙台駅ー女川駅)
- 磐越西線(郡山駅ー喜多方駅)
- 釜石線(盛岡駅ー遠野駅)
磐越西線にはしばらく「風っこストーブ」が走っていませんでしたが、2022-23シーズンから復活しました。
「風っこストーブ」予約の取り方・きっぷの準備
臨時列車の「風っこストーブ」は、全車指定席の快速列車です。きっぷを買えば誰でも乗車できますが、乗車券の他に「指定席券」が必要です。
指定席券について
トロッコ列車として座席が作られていることもあって、一つ一つのボックスシートは、かなり狭めです。大人が4人で座るにはかなり窮屈で、ファミリーで利用するのがちょうどよいです。指定席券を購入する際には、これを念頭に置くとよいかと思います。
指定席券は、1席につき大人840円(小児420円)です。また、指定席券は、駅のみどりの窓口や指定席券売機の他、ネット予約「えきねっと」でも購入できます。
きっぷの買い方は、春夏秋に運行される「風っこ」と全く同じです。トロッコ列車「風っこ」の楽しみ方と合わせ、以下の記事(↓)をぜひご一読ください。
乗車券について
乗車券については、普通乗車券(紙のきっぷ)を使えるのはもちろん、運行区間が交通系ICカードの利用エリアであれば、交通系ICカードの利用が可能です。
また、首都圏・信越地区・南東北地区をカバーする「週末パス」や、東北本部管内の在来線をカバーする「小さな旅ホリデー・パス」も、乗車券として利用できます。
ここからは、「風っこストーブ喜多方」号に往復乗車した体験をご紹介します!
快速「風っこストーブ喜多方」号|下り列車乗車【2022-23冬】
臨時快速列車として運行される「風っこストーブ喜多方」号は、磐越西線郡山駅(福島県郡山市)から会津若松駅(福島県会津若松市)を経由し、終点の喜多方駅(福島県喜多方市)まで向かいます。全区間の所要時間は、正味で約2時間です。
「風っこストーブ喜多方」号は、毎年冬場に運行されます。2022-23年冬季は、2023年2月11日から12日にかけて運行されました。この列車に乗車したのは、2016年2月に初めて乗車してから7年ぶりでした。
風っこストーブ喜多方号 下り(9225D):
郡山駅 9時04分発 →(磐越西線)→ 喜多方駅 11時26分着
郡山駅で「風っこストーブ」を待つ
筆者は運行初日の11日に乗車しましたが、発車寸前に郡山駅で停電が発生した影響で、発車が40分あまり遅れました。実際には郡山駅を9時47分に発車し、終点喜多方駅には12時04分に到着しました。
2016年2月に初めて乗車した時には、当時活躍していた「リゾートみのり」号用のキハ48形車両が、イベントカーとして連結されていました。今回は、あいにく連結されていませんでした。
列車が出発する郡山駅2番線ホームには「風っこストーブ喜多方」号の発車時刻が表示されていましたが「この列車は、団体専用です」との表示が。いやいや、本当は指定席券を買えば誰でも乗車できる多客臨時列車(多客臨)です。
停電していた郡山駅の機能が回復し、先発の普通列車をさばき終わってから、風っこが入線。定刻からすでに30分あまり過ぎていました。
入線してすぐにドアが開き、車内へ。2号車に設置されただるまストーブの上には、すでに他の乗客が持ち込んだ干いもといかのスルメが。車内には、その匂いが充満していい雰囲気が出ていました。
元々トロッコ列車の風っこの座席は、4人掛けのボックスシートです。夏場にはない座布団が、冬場には各座席に設置されています。
列車発車後喜多方駅へ向かう車内の様子
定刻から43分遅れの9時47分に、郡山駅を出発。お見送りは特にありませんでした。
磐越西線が一時不通だったため、列車の運行が乱れていました。そのため、途中の磐梯熱海駅(福島県郡山市)では列車との交換待ちで長時間停車したり、その先の信号所では後続の快速列車に追い抜かれたり、普段では見られない運行でした。
磐梯熱海駅を過ぎると、何か所かトンネルを通ります。その時、車内を照らす白熱灯の明かりが、美しかったです。車内はほぼ満席で、ほとんどのボックスが相席でした。風っこのボックスシートは狭いので、随分圧迫感がありました。
途中の会津若松駅には11時42分に到着し、ここから列車の進行方向が逆に。JRの駅員たちが、出迎えてくれました。
終点の喜多方駅までは高速で疾走し、定刻から約40分遅れの12時04分に到着。
喜多方駅でも、観光協会の人たちがお出迎え。
多くの観光列車では、終着駅で観光案内の資料が配布されることが多いです。例によって、ここでもポストカード入りの資料が配布されました。喜多方ラーメンの「老麺会」の加盟店が載った地図が入っていて、参考になりました。
ちょうどお昼時だったので、駅チカの食堂で喜多方ラーメン「支那そば」を実食。
快速「風っこストーブ喜多方」号|上り列車乗車【2022/23冬】
喜多方駅を出発し、郡山駅に戻る「風っこストーブ喜多方」号の上り列車にも、同日に乗車しました。喜多方駅で車内をじっくり見られたので、車内の設備について詳しくお伝えしたいと思います。
風っこストーブ喜多方号 上り(9226D):
喜多方駅 14時08分発 →(磐越西線)→ 郡山駅 16時12分着
「風っこストーブ」の車両探索
午後には磐越西線のダイヤが正常に戻り、「風っこストーブ喜多方」上り列車は定刻で出発しました。
喜多方駅の2番線ホームには、風っこの車両がすでに止まっていました。
「風っこストーブ喜多方」号の行先表示板(サボ)。観光列車の多くがLED表示の中、風っこは昔ながらの鉄板で、いい雰囲気が醸し出されています。
13時50分過ぎ、車内の準備ができてドアが開きました。だるまストーブが設置されている2号車の車内では、JRの社員が3名添乗していて、ストーブの点火作業を行っている最中でした。
トロッコ列車の「風っこ」車内は、カントリー風です。どこか古さを感じますが、そのために列車のいい味がにじみ出ています。ボックスシートの各席には、座布団が敷かれています。木製の座席のため、長時間乗っていると座り疲れます。
真冬のストーブ列車のため、窓には全面ガラスがはめられています。そのため、車内は保温されています。特に、ストーブがある2号車の車内は、かなり暖かくなっていました。
1号車の車内レイアウトも、2号車とほぼ同じです。ただし、トイレがある代わりに、ストーブはありません。1号車にはストーブがないので、2号車よりも寒いです。きっぷを買う際、席に余裕があれば、2号車の座席を取ることをおススメします。
だるまストーブで食べ物を温めつつ郡山駅へ向かう
これが、だるまストーブの全貌です。煙の配管が屋根まで伸びていて、列車の走行中は風がよく入って火の勢いが強くなるとのこと。
だるまストーブの脇には、石炭が置いてありました。その石炭をストーブの中に注入して、火をつけます。
食べ物を持ち込んでストーブで加熱できることを、ゆきの車内で知りました。筆者も酒のつまみにあたりめを仕込んできて、さっそくストーブの上にある網に乗せてみました。列車が発車してからストーブの火が強くなり、イカが焼けた匂いがしてきました。
あたりめがちょうど焦げそうになった頃合いでストーブから引き上げ、酒の肴として一杯やりました。
そんなこんだでいい気持ちになってきたところで、会津若松駅に到着。列車の進行方向が再び逆になり、多くの乗客が車内に入ってきました。ツアーの団体客も乗車してきて、車内はほぼ満席に。
郡山駅まで1時間強疾走し、終点には定刻の16時12分に到着。座席が狭いにもかかわらず、他の客と相席に。降りた時には疲れを感じましたが、この列車が人気があることの証でしょうか。
まとめ ~風っこストーブの魅力~
車内に設置されただるまストーブに持ち込んだ食べ物を温めて、酒の肴として一杯やりながらの乗り鉄。これは、「風っこストーブ」でしか味わえない非日常の体験です。ストーブ列車は、雪国東北ならではの冬の楽しみ方だと思います。
そんな魅力があってか、「風っこストーブ」には鉄道ファン以外にも多くのリピーターがいるように思えます。そのためか、夏場の「風っこ」よりも席が取りにくいような印象を持ちました。
自動化や省人化が進む鉄道業界の中にあって、乗務員以外にJRのスタッフが3名も付いて、だるまストーブのケアをする光景。JR東日本らしからぬ人海戦術ならではの暖かさやホスピタリティを感じました。
快速列車としての運行のため、乗車券に加え指定席券を買えば、リーズナブルに非日常を体験できます。風っこのデビューから20年以上経っていることから、車両の経年劣化が課題でしょうか。
東北地方の魅力が詰め込まれた「風っこ」、永く走ってほしいと思います。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
Appendix-1:「風っこストーブ」運行実績(2022-23冬~)
ここに掲載した列車は、単発で走る列車ではなく、毎年定期的に走る列車です。
● 陸羽東線:仙台駅ー鳴子温泉駅
シーズン | 列車名 | 運行日 | 備考 |
2024-25冬季 | 風っこストーブ湯けむり号 | 2025年2月01-02日 | |
2023-24冬季 | 風っこストーブ湯けむり号 | 2024年1月27-28日 | |
2022-23冬季 | 風っこストーブ湯けむり号 | 2023年1月21-22日 |
● 石巻線:仙台駅ー女川駅
シーズン | 列車名 | 運行日 | 備考 |
2024-25冬季 | 風っこストーブ女川号 | 2025年2月08-09日 | |
2023-24冬季 | 風っこストーブ女川号 | 2024年2月23-24日 | |
2022-23冬季 | 風っこストーブ女川号 | 2023年2月18-19日 |
● 磐越西線:郡山駅ー喜多方駅
シーズン | 列車名 | 運行日 | 備考 |
2024-25冬季 | 風っこストーブ喜多方号 | 2025年1月18-19日 | |
2023-24冬季 | 風っこストーブ喜多方号 | 2024年2月10-11日 | |
2022-23冬季 | 風っこストーブ喜多方号 | 2023年2月11-12日 |
● 釜石線:盛岡駅ー遠野駅
シーズン | 列車名 | 運行日 | 備考 |
2024-25冬季 | 風っこストーブ遠野号 | 2025年2月23-24日 | |
2023-24冬季 | 風っこストーブ遠野号 | 2024年1月13-14日 | |
2022-23冬季 | (運行なし) |
Appendix-2:「びゅうコースター風っこ」席番表
(2号車)
(1号車)
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