JR東日本管内のローカル線を中心に、臨時列車として投入されるトロッコ車両「びゅうコースター風っこ」。
春から秋にかけては、オープンエアーの車内に入る風を浴びながらの移動が心地よいです。冬場には車内に設置されたストーブが稼働して、同じ車両がストーブ列車に変わります。
「びゅうコースター風っこ」はJR東日本管内の各地に出張し、臨時列車として多くの区間を走ります。ただし、運行される線区や時期には一定のパターンがあり、季節列車的な存在です。
この列車は、いわゆる「のってたのしい列車」に分類されておらず、単発の臨時列車扱いです。これが、運行情報の収集方法やきっぷの取り方に関係してきます。
楽しそうな列車ですね!
天気がいいと、涼風を浴びながら、気分爽快な乗り鉄を楽しめます!
この記事では、いわばJR版のトロッコ列車「風っこ」の概要や予約の取り方、きっぷの買い方について、詳しく説明します。
「風っこ」の中でも、春から秋にかけてオープンエアーの車内を楽しめる代表的な列車が、只見線を走る「風っこ只見線」号です。2023年夏に乗車した体験を、ご紹介します。
「びゅうコースター風っこ」の概要・列車の運行区間
「びゅうコースター風っこ」は、気動車のキハ48形がトロッコ列車として改造された2両編成の車両です。2000年から稼働していますが、すでに20年以上が経っています。実際に乗車しても、経年劣化が進んでいることが感じられます。
しかし、定番の「のってたのしい列車」では得られない、一世代前の観光列車として懐かしい汽車旅の風情を満喫できるのです。
「びゅうコースター風っこ」の所属は、宮城県北部の美里町にある小牛田運輸区です。小牛田をベースに、各地に出張して臨時列車として稼働しています。
毎年春から秋にかけて走る「びゅうコースター風っこ」は、窓ガラスを取り払い、車内に風が心地よく吹き込む、オープンエアーの車両です。2両編成の列車の座席は、木製のボックスシートです。
「風っこ」が走る線区・区間
冒頭で申し上げた通り、「びゅうコースター風っこ」は、単発の臨時列車として走ることは少なく、毎年決まった季節に同じ線区・区間を走る傾向があります。
「びゅうコースター風っこ」の列車名には、線区や目的地の地名、季節が織り込まれています。「風っこ●●」号か「●●風っこ」号のような体裁です。
2023年度以降に定期的に運行されている、春夏秋の「風っこ●●」号の運行時期・線区・区間を、当記事の最後に記載しました。
定期的に「風っこ」が走る線区は、次の通りです。
- 只見線(会津若松駅・只見駅間)
- 水郡線(水戸駅・磐城石川駅間)
- 仙山線(仙台駅・山形駅間)
- 五能線(弘前駅・五所川原駅間)
- 男鹿線(秋田駅・男鹿駅間)
このように、「びゅうコースター風っこ」はいろいろな線区に出張し、運行されます。したがって、決まったルートを走る「のってたのしい列車」には分類されていません。過度に商業化されていない、純粋な穴場的臨時列車の乗り鉄を楽しむことができるのではないでしょうか。
冬場にストーブ列車として走る「風っこストーブ」号の乗車体験については、筆者の別記事(↓)をご一読ください。
「風っこ」の席番表
1号車と2号車の中間から先頭部分に向かって、席番が進みます。
1号車では、トイレに近い方が若い席番、2号車ではストーブに近い方が若い席番です。そのため、1号車と2号車では進行方向に向かって偶数番か奇数番か異なります。席番を指定する際には、要注意です。
席番表の拡大版については、当記事の最後をご覧ください。
「風っこ」の情報源
「風っこ」は「のってたのしい列車」ではないため、公式のウェブサイトがありません。運行日や区間などの詳しい情報については、季節ごとの増発列車が記載されたJR東日本のニュースリリースから得ましょう。
臨時列車の運行情報を得るための方法を、別の記事に詳しく記載しました。ぜひご一読ください。
「風っこ」号の予約の取り方・きっぷの準備
臨時列車の「風っこ」は、いずれの列車も全車指定席です。乗車するには、事前に「乗車券」と「指定席券」を準備します。
一言に「風っこ」と言っても、毎年定期的に走る臨時列車か、1回限り走る単発の臨時列車かで、それぞれ性格が違います。そのため、列車の予約の取りやすさについては、一概には言えません。これまで走ったことがない区間を初めて走る場合、予約が取りにくいのではないでしょうか。
トロッコ列車である「風っこ」の木製ボックスシートは、かなり狭めです。1ボックスあたり、大人2人と子ども1人で座って、ちょうどいい感じでしょうか。大柄な男性が4人で座ると、かなり圧迫感があります。混雑していなければ、間隔をあけて座席指定するとよいでしょう。
指定席券のお値段
「びゅうコースター風っこ」の指定席券の値段は、2023年10月以降引き上げられました。通年で、大人840円(小児420円)です。
指定席券の発売開始時期
乗車1か月前の日の朝10時00分に座席の発売が開始されます。指定席券を購入する箇所・手段による発売開始時期は、以下の通りです。
● 駅のみどりの窓口(有人窓口)
乗車日1か月前の10時00分~
只見線内の駅員常駐駅には、みどりの窓口はありません。しかし、状況によっては指定券を取次手配で買える場合があります。
● 駅の指定席券売機【シートマップ表示可】
乗車日1か月前の10時00分~
みどりの窓口やえきねっとと同時刻です。
指定席券売機できっぷを買うための操作方法については、姉妹サイト「デジきっぷナビ」上の別の記事(↓)をヒントにしてみてください。
● ネット予約「えきねっと」【シートマップ表示可】
乗車日の1か月7日前の午後14時00分~【事前受付開始時刻】
実際に座席が確保され、予約が成立するのは、乗車日1か月前の10時00分以降です(取れない場合もあります)。
「えきねっと」トップページにある「のってたのしい列車」のリンクをたどると、列車の一覧が表示されます。その中に「風っこ」が表示されるようになりました。予約を取りたい列車がプルダウンリストに表示されていれば、そこから予約できます。
ただし、そのプルダウンリストの保守には、不安があります。通常の検索画面から発駅名、着駅名、日にち、発車時刻を自分で入力して、目当ての列車を表示させるのが、一番確実でしょう。
画像引用元:えきねっとウェブサイト
他の列車と同様、臨時列車の「風っこ」であってもシートマップを表示し、好きな席を選べます。
えきねっとで座席が取れた場合、決済完了後に駅の指定席券売機で指定席券(紙のきっぷ)の受け取りが必要です。
指定席券の様式
購入後発行される指定席券の様式は、以下の通りです。
列車によって、券面に記載される「風っこ●●」号の列車名が変わります。
乗車券について
「風っこ」に乗車するためには、指定席券の他、乗車区間を含んだ乗車券が必要です。普通乗車券の他、「週末パス」や「小さな旅ホリデーパス」が利用可能です。また、期間限定の「青春18きっぷ」や「北海道・東日本パス」、「大人の休日俱楽部パス」を使用しても大丈夫です。
「大人の休日俱楽部パス」では、「風っこ」の指定券(指のみ券)を回数の枠内で、パス料金込みで取ることができます。
きっぷが取れたら
春から秋にかけて走る「風っこ」はオープンエアーの車両なので、天気の影響を直接受けます。
晴れていれば、最高に心地よい風を浴びれる一方、雨に降られるとカーテンの中に閉じ込められるため、居住性には天と地の差があります。
天気によって車内の気温差が大きいため、そのつもりで服装を調整したいです。また、突然の雨に備え、雨具があるとより安心でしょう。
後述するように、真夏に乗車する場合の熱中症対策も必須です。
きっぷを購入できたら、あとは乗車当日の好天を祈りたいです。
2023年夏に「風っこ只見線夏休み」号に乗車した体験をご紹介します!
快速「風っこ只見線夏休み」号上り列車に実乗!【2023年夏】
全線で運行が再開した只見線を走る「風っこ只見線夏休み」号に、只見駅から会津若松駅までの全区間を2023年7月に乗車しました。ここでは、指定席券を取るところから実際に乗車した際の様子までお伝えします。
風っこ只見線夏休み号(9428D):
只見駅 13時30分発 →(JR只見線)→ 会津若松駅 16時14分着
指定席券は、ネット予約「えきねっと」を利用して取りました。発売開始時点で瞬殺でしたが、筆者は事前受付していたので、運よく押さえられました。只見線が全線で復旧して以来、只見線の乗り鉄自体が非常に人気があり、きっぷが取りにくいようです。
乗車券として、青春18きっぷを使用しました。風っこは快速列車扱いなので、青春18きっぷと指定席券があれば乗車できます。
風っこの乗車当日は、只見線終端駅の上越線小出駅から、臨時の普通列車で只見駅に入りました。只見駅に到着した時には、すでに風っこの車両が入線していました。
風っこで只見駅に到着した乗客と、筆者が乗車した臨時の普通列車で到着した乗客とで、只見駅の構内はにぎわっていました。
只見駅の入口には、全線復旧した2022年10月からの日数がカウントアップしているボードが掲げられていました。
発車時刻のかなり前、13時ちょうどにドアが開いて、車内に入れました。この日は灼熱の暑さでしたが、風っこには冷房装置がないので涼むことができませんでした。真夏に乗車する場合、飲み物を十分に準備するなどの熱中症対策をしっかり取りましょう。
列車の行先が表示されるサボ、今回は「臨時」の表示で残念。車体の塗装が劣化しているのが分かり、先が心配になります。
定刻の13時30分に、会津若松駅に向けて出発。約2時間45分の長丁場です。只見線が走る奥会津地方には日本の原風景が残っていて、鉄道から見える景色としては貴重です。
列車がトンネルに入ると車内が暗くなりますが、風っこの車内照明は白熱灯で、懐かしい風情を楽しめます。この日の客層としては中高生の若い世代と年齢層が高い世代が多く、対照的でした。
復旧したばかりの区間を走り終えて、列車は会津川口駅へ。湖面が美しい駅です。
山岳地帯を抜けると、会津盆地に入ります。会津坂下駅を過ぎると、手つかずの田園地帯が続きます。そして列車は会津若松市内に入り、定刻に会津若松駅に到着。
まとめ
「びゅうコースター風っこ」は、JR東日本管内のローカル線を走る、JR版トロッコ列車です。只見線と水郡線を中心に、南東北地区(JR東北本部管内)の線区で、臨時列車として運行しています。
風っこは観光列車であるにもかかわらず、「のってたのしい列車」には含まれていません。そんなこともあって、素朴な乗り鉄を楽しめます。
季節によっては窓が取り外されることもありますが、基本的には窓が取り付けられています。窓が取り外されたオープンエアーな状態では、車内に入ってくる風が心地よく感じられることでしょう。
この列車は、全車指定席の快速列車として運行されます。そのため、乗車するには乗車券の他、指定席券が必要です。ボックスシートが狭めで、大人4人で座ると窮屈に感じます。相席になると圧迫感を感じるかもしれません。
この列車の魅力が知られるようになり、最近は指定席券の確保が難しくなってきています。できれば、乗車日1か月前の発売開始時に、きっぷを購入したいです。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
Appendix-1:「びゅうコースター風っこ」運行実績(2023年~)
ここでは、単発で走る列車ではなく、春から秋にかけて毎年定期的に走る列車を記載しました。
● 只見線
シーズン | 列車名 | 運行日 | 備考 |
2024年秋季 | 風っこ只見線満喫号 | 10月5,6,12-14日 | |
2024年夏季 | 風っこ只見線満喫号 | 7月20,21,27,28日 | |
2024年春季 | 風っこ只見線満喫号 | 4月27-29日,5月3-6日 |
シーズン | 列車名 | 運行日 | 備考 |
2023年秋季 | 風っこ只見線満喫号 | 10月7-9,14,15日 | |
2023年夏季 | 風っこ只見線夏休み号 | 7月22,23,29,30日 | |
2023年春季 | 風っこ只見線新緑号 | 4月29,30日,5月3-7日 |
● 水郡線
シーズン | 列車名 | 運行日 | 備考 |
2024年秋季 | 水郡線90周年風っこ号 | 11月2,3日 | |
2024年夏季 | (運行なし) | ||
2024年春季 | 春の水郡風っこ号 | 3月30,31日 |
シーズン | 列車名 | 運行日 | 備考 |
2023年秋季 | 風っこ紅葉回廊号(下り) | 11月3,4日 | 水戸駅発着 |
2023年秋季 | 風っこ奥久慈夜メグリ号(上り) | 11月3,4日 | 水戸駅発着 |
2023年秋季 | 風っこ水郡線紅葉号 | 11月11,12日 | 郡山駅発着 |
2023年夏季 | 風っこ奥久慈号 | 8月26,27日 | 水戸駅発着 |
2023年春季 | 春の水郡風っこ号 | 4月1,2日 | 水戸駅発着 |
● 仙山線
シーズン | 列車名 | 運行日 | 備考 |
2024年秋季 | (運行なし) | ||
2024年夏季 | (運行なし) | ||
2024年春季 | 風っこ仙山線春風号 | 4月20日 |
シーズン | 列車名 | 運行日 | 備考 |
2023年秋季 | 風っこ仙山線紅葉号 | 10月29日 | |
2023年夏季 | (運行なし) | ||
2023年春季 | (運行なし) |
● 五能線
シーズン | 列車名 | 運行日 | 備考 |
2024年春季 | りんごの花風っこ号 | 5月11日 | |
2023年春季 | (運行なし) |
● 男鹿線
シーズン | 列車名 | 運行日 | 備考 |
2024年夏季 | 風っこ男鹿あじさい号 | 7月13,14日 | |
2023年夏季 | 風っこ男鹿あじさい号 | 7月1日 |
Appendix-2:「びゅうコースター風っこ」席番表
(2号車)
(1号車)
当記事の改訂履歴
2025年02月01日:初稿 修正
2024年12月31日:初稿 修正
2024年12月15日:当サイト初稿(リニューアル)
2022年7月20日:前サイト初稿
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